2024年12月27日(金)

ベテラン経済記者の眼

2012年9月20日

 再生可能エネルギーへの期待も過大だ。筆者自身の過去の取材の「経験値」からしても、経済性を向上させながら短期間で急激に比率を上げ、原発に代替できるレベルにまでもって行くのはかなり難しい。この10年を振り返ってみても、確かに再生可能エネルギーの開発・利用は着実に前に進んではいるが、劇的に物事が変化しているとは思えない。歩みはエネルギー全体からするとわずかで、まだまだ小さな比率にすぎない。これは日本の経済界の責任ある立場の人々に共通する思いだろう。

 ただ「原発ゼロ容認」のメディアの主張にも理解できる点がない訳ではない。東京電力福島第一原子力発電所のメルトダウンの連鎖は、原発の抱える巨大なリスクと不安を国民に認識させ、安全性確保の重要性をあらためて印象づけた。二度と同様な事態が起こることのないよう電力会社など関係機関は全力を挙げているはずだが、将来、もし同じような危機が再来するようなことがあれば、世論もマスコミの論調もまた大きく変わる。安全の確保は議論の大前提だ。

 今回のように新聞を6紙並べて比較することなど、正直、あまり多くの人はやらないかもしれない。しかし新聞一紙を読んでいるだけでは世の中の多様な意見や主張をつかみにくいのは確かだ。新聞や雑誌を読み比べ、あるいはテレビ報道なども比較して、どのメディアの報道や論調が現実を直視し、筋が通っているのか読者や視聴者の方々に的確に判断していただきたい、というのがメディアの世界に身を置く筆者の率直な思いでもある。今回の一連のエネルギー政策をめぐる報道は、そうした大きな機会を提供しているのではないかとも思う。


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