2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年10月16日

 9月4日付ウェブCFRで、Joshua Kurlantzick米外交問題評議会研究員は、クリントン米国務長官がアセアン事務総長との会談で、米国はアセアンが地域の問題に有効に対処するための能力を強めることに関心があると述べたことに触れ、アセアンのリーダー格インドネシアもアセアン事務局の強化に関心がある、と述べています。

 すなわち、アセアンの原加盟国の指導者たちはアセアンに多くの権限を委譲することに消極的で、アセアンは比較的弱い機構であったが、アセアンが地域の問題で十分な役割を果たし、南シナ海のような重要な問題で加盟国の利益を守るためには、アセアンはより統一され、より充実した事務局を持つことが必要であるとの認識が高まりつつある。特にアセアンの最も重要な加盟国であるインドネシアとシンガポールは弱い事務局の問題点を自覚するようになった。インドネシアは、過去3カ月アセアンの分裂を修復し、南シナ海での共通の立場を打ち立てるべく努力する過程で、アセアン事務局を強化しつつ、自らが望むリーダーシップを得られることに気が付いた。アセアンの将来に関しては、インドネシアの決定が最も重要である、と述べています。

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 アセアンは、加盟国の多様性と緩い地域協力機構を特色としてきました。したがって、事務局の権限もEUのブラッセルとは比較にならないほど弱いものでした。それがここに来て、南シナ海問題への対処などをきっかけに、地域協力機構として変質を遂げようとしています。2015年のアセアン共同体の発足も、1つの契機となるでしょう。アセアンの加盟国は、国の規模、歴史、宗教、経済発展の程度などが多様であり、より統一された地域協力機構にアセアンを発展させることは容易ではないでしょうが、趨勢としては、その方向に動くことは間違いなく、その際、インドネシアが重要な役割を果たすことも、論説指摘の通りです。

 日本としては、このようなアセアン強化の動きは歓迎すべきことで、アセアン・プロジェクトへの協力拡大、アセアン事務局との連携強化などにより、アセアンへの支援を図るべきでしょう。

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