7月13日付米Wall Street Journal紙の社説は、今年のASEAN外相会議では、南シナ海問題での対中姿勢の不一致で共同声明を発出することが出来ず、それは、ASEAN統合の目標を揺るがし、組織としてのASEANの信頼性をなくし、中国に大胆な行動を取らせる危険がある、と警告しています。
すなわち、中国は隣国と問題を起こしている。6月にはフィリピンと対峙し、最近は日本の領海に出てきている。にもかかわらず、近隣諸国は中国を止めるための十分な努力をしていない。
カンボジアでのASEAN会議では、南シナ海における「行動規範」についての話し合いは成果を挙げられなかった。行動規範には、領有権を主張する諸国間の緊張緩和メカニズムとして、制裁措置を含んだ、紛争解決メカ二ズムとなることが求められるが、現状ではそこまで至っていない。
どんな種類の法的文書も署名者の誠実さと執行メカニズムの強さの程度に従って拘束力がある。中国の誓約がなければ、行動規範が守られる保証もない。
問題は、中国が南シナ海や他の領域で、挑発的行動を取っていることである。中国を交渉のテーブルに着かせ、妥当な解決策を図る確実な方法は、ASEANが行動規範について統一戦線を結成することである。北京は各個撃破できる2国間交渉を好んでいる。
ASEANがこの問題について共通戦線を張れないことは心配である。ベトナムとフィリピンが強い行動規範を求めたのに対し、カンボジアなど南シナ海で領有権を主張しない国々は、中国を刺激しないように穏便な文言を望んだ。
カンボジア等は、これが妥当な立場と考えているようだが、そうではない。ASEANは今、より緊密な経済・政治統合を目指している。加盟国の主権的な領土問題について、共通の立場をとることに失敗すれば、ASEANは統合の目標を失い、組織の信用をなくし、北京を傲慢にさせる、と論じています。
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この社説は的を射ています。今年のASEAN外相会議は、カンボジアを議長国として開かれましたが、南シナ海問題については、カンボジアが、中国と関係国との2国間問題であるという中国の主張と同じ主張を行ない、共同声明にスカボロー環礁への言及などを行うことを拒否しました。インドネシアがカンボジアとフィリピン・ベトナムとの間に入って調整の努力をしたようですが、成果にはつながらず、結果として共同声明が出せませんでした。ASEANの団結ではなく、ASEANの分裂を示してしまったと言えます。