2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年7月17日

 6月14日付Wall Street Journal紙で、Ian Storeyシンガポール東南アジア研究所上席研究員は、ASEAN諸国の対中認識はバラバラで、南シナ海問題について結束することは難しく、結局、中国に各個撃破されそうである、と述べています。

 すなわち、南シナ海に経済的・戦略的利害を有するか否かにより、ASEANは分裂状態にある。第1のグループは、このような利害を有する国であり、南シナ海で領有権を主張するブルネイ、マレーシア、フィリピン、ヴェトナムの4カ国とインドネシア、シンガポールを含む島嶼国である。

 このグループの中でも、意見は分かれている。ヴェトナムとフィリピンでは中国との対立が主要な国家安全保障の問題となっているのに対し、マレーシア、ブルネイは中国との距離が離れていることもあり、中国との対立を強調していない。更に、これら4カ国の領有権主張が競合していることも結束を難しくしている。

 第2のグループは、カンボジア、ラオス、ビルマ、タイからなる非島嶼国である。中国はこれら諸国と緊密な関係を築いているので、何れの国も中国との関係を悪くしたくない。

 更に、南シナ海の紛争に米国が果たすべき役割についてのASEAN諸国の論争がASEANの分裂を深めている。一部の諸国は米国の関与が深まれば、中国の敵意を買い、解決が難しくなると懸念している。

 緊張が高まるにつれて、ASEANの役割に対する期待が高まっているが、ASEANが期待に応えることは難しく、結局、中国に各個撃破されそうである、と述べています。

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 ASEAN諸国内で対中関係についての利害が異なり、南シナ海の問題について統一姿勢を示せていないのは事実でしょう。しかしながら、ASEAN諸国が米国の関与を嫌って、結局、中国の各個撃破を許すようなことが、ASEAN諸国の利益になるとは言い難いと思います。米国の関与をうまく利用しつつ、南シナ海における行動規範の強化、武力に拠らない紛争解決の手続きなどを地道に築いていく努力を続けるべきです。

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