10年経っても「普通の現場」ではない
東日本大震災発生から10年が経過し、福島第一原発は処理水の海洋放出といった新たな展開を迎えている。本著でも、新型コロナウイルス感染拡大により、原子炉の冷却を担う運転員の作業に感染対策が加わったことや、デブリの取り出し作業予定の変更といった最新の移り変わりも盛り込んでいる。
「水も飲めない、高放射線量のがれきのそばでの作業というリスクは減り、休憩所や食堂も整備されて、働く環境は良くなった。それでも、まだまだ〝普通の現場〟ではない。リスクはあちらこちらにある。そうした意味で常に現場を見続ける必要はありますし、何度でも振り返る意味はある」と稲泉氏は話す。
大震災への取材はこれからも続けていく。「福島第一原発の周囲では住民の帰還が始まりつつある場所もある。そうした町や地域がどうなっていくのか。今後も取材を続けていきたい」と抱負を語る。
東日本大震災から10年という節目を経て、稲泉氏の取材はまだまだ続きそうだ。
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