英フィナンシャル・タイムスの外交問題コラムニストであるギデオン・ラックマン(Gideon Rachman)が、11月12日付同紙に「米中、危険な海を航行中(China and US navigate in risky waters)」と題するコラムを寄稿し、米中新政権とも衝突回避を志向しているが、両国間の誤算による紛争発生の危険は高まっている、と論じています。
すなわち、尖閣をめぐる日中間の緊張が高まる中、米中の力のギャップは狭まり、中国は自己主張を強め、米国が押し返し、その中で誤算や紛争が起きる可能性が増してきているという、危険な状況になりつつある。
約30年間、鄧小平の韜光養晦戦略は機能してきたが、過去数年、状況は変わり、中国の強硬姿勢に対するインド、フィリピン、ベトナム、日本の懸念が高まっている。
問題は、中国の習近平新指導部がより強硬姿勢を強めるか否かだが、彼らが中国の力を過大評価し、米国の力を過小評価する危険はある。新政権の背後にはより強硬な若い世代の民族主義がある。天安門事件後、中国は統治の正統性の根拠を特に日本などに対する排外主義に求めてきた。
この種の誤算は、中国だけでなく、同様のナショナリズムを抱える日本、更には米国も犯す可能性がある。
現在、米国は、同盟国の対中恐怖心を利用して同盟強化を進めているが、この戦略はアジア同盟国の領土問題に米国が巻き込まれる危険を秘めている。
よい知らせは、米中の新指導部とも紛争回避を志向していることだが、悪い知らせは、それでも米中誤算の危険が高まっていることである、と述べています。
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ラックマンの主張は、現在、中国を除く多くの日米アジアの安全保障専門家たちが抱いている懸念を率直に代弁するものです。