2024年12月21日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月24日

 米国は、アジア回帰、あるいは、アジアへの戦略的リバランスを続けるであろうが、このプロセスが責任をもって進められることが、米国とアジアにとって、重大な利益である。アジア回帰についてのパラドックスは、アジアにおいてパワーと威信を高めようとする米国の企図は、中東の地位が低下する中で、如何にして米国とアジア双方の利益を守るかということによって判定される部分がある、ということである、と論じています。

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 これは、イラク戦争の開戦から10周年を迎えて、イラク、アフガン関与の是非が改めて論じられている中での、キャンベルの論説です。

 アジア回帰戦略は、従来漠然と、クリントンとキャンベルの共同の戦略のように考えられていましたが、顧みると、アジア回帰についてのキャンベルの論文・論説というものは無く、あったのは、公聴会における官僚的な発言ばかりだったようです。

 たしかに、軍との関係も良い保守的なキャンベルとしては、軍が10年間営々として従事して来た中東作戦を、民主党のリベラルが主張するように、軽々に見捨てる立場は取れないのでしょう。したがって、アジア回帰支持と同時に、中東切り捨て反対という立場となるのであろうと思われます。

 ただ、論理には若干牽強付会なところもあります。たしかに、日本はサマワに出兵し、大量のアフガン援助を行い、豪、韓もそれぞれに協力していますが、それは、アメリカが中東関与している限りの付き合い以上のものではありません。石油ルートの防衛を期待するのは当然ですが、それは主として海軍の役割期待となるでしょう。

 また、この論説では、中東における責任継続と、アジア回帰の両方を実現するための経費についての言及は全くなく、いささか説得力に欠けると言わねばなりません。

 日本としては、石油ルートの防衛は当然のこととして、今後集団的自衛権問題の解決を経て日本もそれに全面的に協力するとともに、中国軍事力増大に対抗するためには、アメリカのアジア回帰に強く期待し続けることとなるでしょう。

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