高度経済成長期、バブル期、バブル崩壊後から現在──。日本企業の盛衰を、経営者や事業再生専門家の立場で見てきた三枝氏に、今の日本企業や経営者に足りないことは何かを聞いた。
話し手・三枝 匡(ミスミグループ本社 名誉会長)
聞き手/構成・編集部(野川隆輝)
編集部(以下、──)全盛期には世界一の経済大国である米国をも脅かした日本企業が勢いを失い、現在も伸び悩む原因をどう見ているか。
三枝 最大の要因は「経営者人材」の枯渇だろう。経営者人材とは、個人や組織として実現したいことを明確に持ち、リスクがある中でもリーダーシップを発揮して成長を牽引する人材だ。
同時に、自ら考えようとせず、上司の決定に従うだけの「サラリーマン」が増加した。成長の要因をじっくり考えて分析したり、未来を見据えて次なる大戦略を練ったりすることなく、与えられた仕事さえこなしていれば企業が成長したために、バブル期に至る日本の繁栄期を謳歌できてしまった。
その後バブルが弾けると、一転して企業が縮小フェーズに入った。投資や経費を抑えたり、事業から撤退したりする企業が相次ぎ、「攻めないことが当然」の時代が長く続き、サラリーマンに「萎縮マインド」が刷り込まれた。そうした時代を過ごした世代が今、多くの企業の経営層に上がってきている。
横並びの評価という平等主義が、成長の阻害要因になっている側面がある。組織の中には、現状に強い危機感を抱き本気でどうにかしたいと考えている、いわゆる「血の騒ぐ」人間が必ずいる。そしてトップが見て見ぬフリさえしなければ、その存在には気付けるはずだ。重要なのは、……
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かつては日本企業から世界初の新しいサービスや商品が次々と生み出されたが、今や見る影もない。その背景には、「選択と集中」という合理化策のもと、強みであった多くの事業や技術を「諦め」てきたとの事実が挙げられる。バブル崩壊以降の30年、国内には根拠なき悲観論が蔓延し、多くの日本人が自信を喪失している。だが、諦めるのはまだ早い。いま一度、自らの強みを再確認して、チャレンジすべきだ。