6月28日付米外交問題評議会(CFR)のサイトで、Scott A. Synder米CFR上席研究員は、習近平主席は、就任以来、北朝鮮の核開発に厳しい姿勢を取り、米中、中韓の首脳会談でも、北朝鮮の非核化を求める米、韓の立場に同調したが、中国は朝鮮半島の安定を最優先する立場を変えていないので、突破口が開かれたとまでは言えない、と述べています。
すなわち、2月12日に北朝鮮は3回目の核実験を行ったが、その直後の3月に就任した習近平主席は、北朝鮮の核計画につき目立って厳しい立場を取っている。中国は北朝鮮の核実験を非難する安保理決議に賛成し、北朝鮮とは明確に距離を置いた。2009年の2回目の核実験の際に北朝鮮を擁護したのとは大違いである。昨年6月と11月の平壌での金正恩と中国側高官との会談以降、金正恩とのハイレベルの接触は減少し、中朝関係は、極めて冷たいものとなっている。6月19日、北朝鮮の外務次官と中国の外務次官との間で「戦略対話」が行われたが、長きにわたり中朝間の接触を特別なものにしてきた党対党の接触は、今回は無かった。
習主席は、今春のボアオ・フォーラムで「己だけの利益の為に地域や世界を混乱させるようなことがあってはならない」と述べて以来、明確に厳しい物言いに変えている。更に、習・オバマ会談に先立つ5月後半に訪中した北朝鮮軍トップの崔龍海との会談で、習主席は、北朝鮮側に厳しいメッセージを伝え、「関係各方面は、非核化の目標を堅持し、半島の平和と安全を擁護し、対話と協議を通じた問題解決を堅持すべきである」と強調した。
6月のオバマ大統領との首脳会談で、習主席は、中国が北朝鮮を核保有国として認めないことを再確認し、米韓両国の立場に同調した。この習主席の明確な発言は、朝鮮半島非核化実現の為に米中両国が現実に協力できるとのオバマ政権の自信を深め、米中両国が協力して「ウィン・ウィン」の結果を達成できる「新しい形の大国関係」を構築することに直結する米中関係改善のための主要な具体策となっている。但し、北朝鮮問題が米中両国の懸案のトップに出てきているのは、両国の利害が一致しているからではなく、米中両国が直面している地域の安全保障問題の中で一番難しくない問題であるからに過ぎない。
「新しい形の大国関係」を構築するとの習・オバマのコミットメントは、北東アジア協力構想を唱えて当選した朴槿恵大統領には追い風となった。米中関係の前向きの枠組みがあれば、韓国は米中の何れを選ぶべきかを心配すること無く、韓米同盟を損なわずに中韓関係を強化できるからである。更に、韓国が対中関係で戦略的突破口を開き、朝鮮半島では韓国こそが重要で有益なパートナーであることを中国に認めさせることへの期待も出てくる。盧泰愚大統領が中国との国交を正常化して以来、20年以上にわたり、韓国人は、中国との戦略的協力関係の構築を一貫して望んできたからである。