2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月2日

 中韓両国は、共同声明で、両国協力関係の拡大を目指し、習主席は北朝鮮の非核化を求めると繰り返した。しかし、朝鮮半島の最終的な形についての両国の重点の相違が協力を阻害する可能性は残っている。この関連で注目すべき点は、習主席が朴大統領に対し、「中国は朝鮮半島及び地域の平和と安定を断固擁護し、地域の平和と安定を破壊する如何なる側の行為にも反対し、対話と協議を通じた問題の解決を堅持する」と強調したことである。北朝鮮の3回目の核実験で、中国が、言葉の上では、米韓両国寄りに大きく舵を切ったことは確かであるが、中国は朝鮮半島の安定を最優先する立場を変えた訳ではない。また、北朝鮮が非核化の道に戻る兆候も今のところ見られない。従って、朴大統領の習主席への接近と中韓共同声明の発表は、突破口を開いたものとは言えず、出発点に過ぎない。現実に成果を挙げる為には相当の努力が必要となる、と述べています。

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 長年にわたり、朝鮮半島の問題を研究してきた専門家らしい冷静な見方です。米中首脳会談で、北朝鮮の核問題に焦点が当てられたのは、地域のその他の問題よりは、まだしも取り扱いやすい問題であるからに過ぎないと言うのは、恐らくその通りでしょう。

 中国としても、北朝鮮のこれ以上の核開発を望んでいないことは確かでしょうが、スナイダーが指摘する通り、中国は朝鮮半島の安定を最優先する立場を変えていないので、北朝鮮の非核化を建前として支持するとしても、北朝鮮の体制を不安定化させるような圧力を掛けることはしないでしょう。また、中国が韓国の接近を歓迎しているとしても、朝鮮半島の将来像についての中韓両国の考え方は違うので、協力関係もおのずから制約されると言うのも、興味深い見方です。

 韓国人が盧泰愚政権以来20年以上にわたり、中国との戦略的協力関係の構築を一貫して望んできたということも、日本人が見逃しがちな視点です。

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