2024年11月24日(日)

喧嘩の作法

2013年8月13日

 それは遅れて競争に参加したために進んだ企業の商品をギリギリのところで真似して追いつこうとするためである。他社の知財を黙って使うことはあっても決して使用申し入れはしない。

 申し入れたら多額の実施料を取られるハメになる。そのような背景もあり、新興国の企業の知財の責任者は黒を黒と認めない。市場に出した後でもし黒と認めたら判断ミスとして即座に首が飛ぶそうである。

 したがって絶対折れることの許されない相手と交渉しても時間の無駄ということになる。かくして日米欧老舗の企業対新興国企業の知財バトルは、交渉なしで裁判所に直行することになる。例えば韓国企業が輸出先の各国で一昨年新しく知財訴訟で被告になったのは300件近くあるのだが、背伸びをして商品をだすとき知財侵害というツケは大きくなる。

 日本の知財高等裁判所は世界で比較しても判断レベルが高く信頼に値する。近い将来、日本と各国の経済連携が進み日本の市場にどんどん新興国企業の商品が入ってきたときは多くの業種で日本企業対新興国企業の知財バトルが発生し日本の知財高等裁判所の判断に頼ることになるであろう。当事者間交渉が成り立たないのだから当然である。結果的に日本の知財訴訟の件数は増える。その想定のもとに日本企業が今から訴訟対応力を強化し、知財高等裁判所が判断レベルを高く維持するのは重要なことである。

 その先のいつか、新興国企業も黒を白と無理にいわずにライバルの知財を尊重した交渉をするようになるだろう。そのときには彼らとの交渉もたぶん楽しいものになっているはずである。

◆WEDGE2013年8月号より

 

 

 

 

 

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