2024年12月14日(土)

喧嘩の作法

2013年5月17日

 知財制度は基本的にはいまだに各国別である。特許権や意匠権はそれぞれの国に出願しておかなければ使えない。またある国での裁判結果は他の国の裁判所では基本的には使えない。それぞれの国の主権の下での知財制度であり司法制度である以上、今のところ仕方がない。

 ところが商品は柔軟に国境を越えて移動する。ある国に知財権をもっていてそこで権利行使したとしても、知財権のない隣の国に商品を持って行かれると、楽々と逃げられてしまう。実際にある国で侵害を発見し警告書を送った翌年には、その国での侵害品は著しく減少し、その代わりに別な国で販売が急増する。これは商品販売データ上、はっきり表れるが、変化を見ていると、まるで知財版・全世界もぐらたたきである。

 新興国の企業は、進んだ技術をもつ企業の特許公開公報を参考にして、商品をつくり、相手企業が出願していない国を選んでそこに輸出して稼ぐ戦略をとる。そのような戦略をとる以上、こちら側がどの国に出願しているかはとっくに調べ上げている。もぐらもしたたかで模倣品で金を稼ぐ以上彼らもそれぐらいのことはする。

 ならばこちらも万遍なく出願すればいいかとなると、莫大な費用がかかる。なにしろ日米欧3極に1件の発明を特許出願すると、有効期間である20年間の維持費用と代理人の費用で1000万円かかるのである。アフリカでの出願まで金がまわらない。

 あるときアフリカのある国で模倣品が出回っていた。なんとかしなければこちらのシェアが食われる。しかし登録された知的財産権がない。

模倣品は正確なほうがよい

 ここであきらめてはいけない。特許権や意匠権などのように登録されてはいないが、著作権侵害と不正競争防止法違反が使える。著作権は出願する必要がなく、何か新しいものを創作したら即座に全世界で通用する。つまり日本であろうがどこであろうが、自分の持っている写真や図面などを総動員して著作権侵害の主張ができる。よくしたことに模倣品はぴったり正確に作ってくれるので著作権侵害はいいやすい。不正競争防止法も世界中の国でTRIPSという知財保護国際ルールにしたがって法律が整備されているのでこれも主張できる。


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