2024年12月13日(金)

喧嘩の作法

2013年2月14日

 裁判が公平に行われているかどうか疑問がある国は世界に多くある。公平に見えない裁判には、例えば自国の企業に有利な判決を出すホームタウンデシジョンのような比較的理解しやすいものもある。

 中国の最高人民法院第三次五カ年改革綱要(2009年3月)には、「党による指導を堅持し、国情ありきという姿勢を堅持する」と書かれているが、これは中国の経済の都合により裁判をするという意味になり、外国企業からの中国企業に対する差止請求は(国情により)認めなくてもいい、と解釈できるそうである。

 国の政策や社会の動きは人間が行う以上こんなものである、と割り切っておくと、自由度が増す。知財裁判も厳密に法律にしたがって訴訟手続きを行い、判決を待つのではなく、あれこれ自由に仕掛けてみることになる。

 数年前、中米の国で原告として知財裁判を行った。中米はメキシコより南側のエリアでグアテマラやコスタリカなどの7か国、カリブ海の諸国も中米にいれると結構多くなる。この地域で裁判を行うときに考えておくのは賄賂という手法の存在である。

 日本企業は基本的に賄賂を使わない。したがって相手側が賄賂を使えばその結果負けるべくして、負ける。客観的には勝てる案件が負ける場合の多くは、賄賂が影響しているという推測も成り立つ。賄賂はビジネスを動かしたとしても、外からはよくわからない。常に噂の域をでないのだが、どう見てもおかしい、というときには高い確率で賄賂が介在する。

 こういう場合の戦い方として、裁判官自身に職務への忠誠心を発揮してもらうことが有効である。例えば裁判官に直接会ってお願いする。会うためには、さまざまなルートを使う。訴訟当事者が係属中の裁判所またはその上級裁判所の裁判官に会おうとしても普通はまず無理であるが、日本の官庁から当該国の官庁へ話を通してもらう官官ルートをはじめ、あの手この手を使えば、会えることもある。中米の国の第一審で負けたあと、あの手この手を使いその国の最高裁長官と会うことになった。そこで何を手土産にするか。まさか賄賂ではない。


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