2024年12月22日(日)

喧嘩の作法

2013年8月13日

 企業間競争でライバルのいい商品が知財で守られているなら、こちらはもっといい商品をつくりさらにいい知財で守ればいい。それは繰り返されるスパイラルアップであり、ライバルと勝ったり負けたりして切磋琢磨することによって双方が成長する。その過程で知財の責任者たちは交渉を繰り返し、ライバルの知財の責任者たちと親しくなる。

驚くほど少ない
日本の知財訴訟

 日本の知財訴訟は年間で200件程度と非常に少ないのだが、同じ括りで数えたときに米国は4000件、中国は8000件というように大変な開きがある。日本で知財訴訟が少ない理由は日本知的財産協会や業界団体の活動を通じて日本企業の知財の責任者たちは互いに親しく、また専門家としてキャリアが長く経験が豊富なため、わざわざ裁判をするまでもなく納得できる答えを当事者間で出せてしまうからである。

 日本だけでなく欧米の同じ業界の知財の責任者たちとも親しくなる。例えばホンダの知財部長の立場だと日米欧の自動車会社や大手の部品会社の知財部長のほとんどと面識があり必要時すぐに知財の調整ができていた。こうした高いレベルでの交渉はやっていて楽しい。知識や経験で腕を競いあうようなところがある。自分も成長している実感がある。

 交渉が楽しくないのは、新興国の企業が相手のときである。特許を侵害するかどうかは、技術を文章で表現した権利範囲という枠の中に、相手の商品の技術が入るかどうかという概念的な判断になるのだが、模倣品そのものではないのでドンピシャというのは少なく、いわば白と黒の間のグレーの色の濃さがどの辺りにあるのか判断するイメージが近いかもしれない。

 白っぽいグレーなら大丈夫そうだし、黒っぽいグレーは危ない。しかし新興国の企業はほとんど黒でも商品を市場に出してくる。


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