2024年5月22日(水)

BBC News

2024年4月22日

ジェイムズ・ウォーターハウス ウクライナ特派員

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は21日、米連邦議会下院がウクライナに追加軍事支援を提供するための緊急予算案を可決したことについて感謝を述べた。この支援が数千人の命を救うと話した。

米下院は20日、数カ月に及ぶ膠着(こうちゃく)状態の後、ウクライナに608億ドル(約9.4兆円)の軍事支援を提供する予算案を、超党派の賛成多数で可決した。

一国の未来が政治家によって決定されることは珍しくないが、国の存亡そのものが、8000キロ以上も離れた場所での議決に左右されるというのは、異常としか言いようがない。

ウクライナにとって、この軍事パッケージを待つ半年間は、不満がたまるだけでなく、犠牲もかさむものだった。

弾薬不足によって、多くの命と領土が奪われた。

ウクライナ政府にとって朗報が少なくなっているだけに、アメリカの支援再開は大きな出来事だ。アメリカの兵器が到着すれば、苦戦するウクライナ軍は、持ちこたえるだけでなく、それ以上の成果を出せるだろう。だが、アメリカの援助は全てを解決する魔法の決定打にはならない。

では、この軍事支援はどのような意味を持つのか。

支援には防衛システムや、中長距離ミサイル、砲弾が含まれるとみられている。

ウクライナでこうした兵器が不足していたことから、ロシア軍は数百キロ平方メートル以上の領土を奪取していた。

支援が到着すればウクライナは、空からの攻撃で優位に立つロシアに挑戦できるかもしれない。補給線を妨害し、部隊の前進を遅らせることも可能かもしれない。

BBCがキーウの中心地でたまたま出会った兵士のヴィタリーさんは、前向きな材料に集中するのが重要だと話した。

「1セント1セントに意味があります」

「本当に必要だ。何もかもが。弾倉1個、1セント、前向きな考え一つ、こうしたものすべてが」

私たちが今年3月に東部ドネツク地方を取材した際、砲撃音のほとんどはロシア側から聞こえると兵士たちは話していた。コスチャンティニウカやクラマトルスクといった街は、これから起こるかもしれない事態に備えていた。今回の援助がこうした街を救うかもしれない。

支援を得ても、ウクライナがたちまち占領地域を次々と解放しロシアを押し戻せるようになるわけではない。しかし、領土解放とロシア後退という将来的な可能性の、余地を作れるようになる。

ウクライナとアメリカの両政府は、アメリカの助けがなければウクライナは敗北するという認識で一致している。

「ないよりは遅れた方がまし」

雨の日曜日午前、キーウの地下鉄構内はいつでも外より暖かい。私たちはそこでマキシムさんと話した。アメリカの支援がやっと可決されたことに喜んでいた。

「本当にうれしい。これほど時間がかかったのは少し残念だが、何はともあれ、まったくないよりは遅れたほうがましです」

マキシムさんは特に、ウクライナは領土と引き換えにロシアと和平交渉をすべきかという議論が広がっていたことにいらだっている。

「ロシアは交渉などしたがらない」と、マキシムさんは理由を説明した。

「ロシアは、ヨーロッパやアメリカがこの戦争を終わらせるために考えているような、妥協は望んでいません。ロシアはすべてを欲しがっています」

私たちは、息子の手を引いて電車を降りてきたウィタさんとも話した。

「援助なしでどうやってウクライナが生き延びられますか?」と、ヴィタさんは問いかけた。

「無理です。そんな軍隊や兵器はウクライナにはありません」

それからヴィタさんは声を震わせて、「不可能です。子供たちが生き延びるために、本当に助けを必要としています。だから待っているんです」と話し、息子の方を見てうなずいた。

この6カ月間で明らかになったのは、ロシアの優位性だけではない。欧州がアメリカと同水準の支援を提供できないという事実も、あらわになった。

ウクライナ国立戦略研究所のミコラ・ビエレスコフ氏は、「我々は、アメリカの次の援助パッケージが通らないかもしれないという仮定について考える必要がある」と話した。

「だからこそ、イギリスや欧州大陸がウクライナの要請に見合うよう、兵器製造を拡大するかが重要です」

ウクライナの現実的な今年の目標は、このアメリカの支援によって前線を安定させることだと、ビエレスコフ氏は述べた。

西側諸国の結束が戻ってきたとはいえ、救援が実際に到着するまでには時間がかかる。それはウクライナが常に抱える問題だ。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、軍事費に関してこれほど多くの政治的ハードルを交渉する必要がないのは確かだ。

民主主義側の遅れは、ウクライナ国外の同盟国に限った話ではない。ウクライナ国内には、自国の戦争努力のために十分な兵士を動員するという問題がある。先には、議論を呼ぶ徴兵法が、数カ月にわたる議論と修正の末に可決されたばかりだ。

ゼレンスキー大統領にとっての現在の課題は、政治と戦闘を切り離して考えることだ。ゼレンスキー氏は今後、アメリカからの最新支援が実際に実を結ぶよう、結果を出さなくてはならないという圧力にさらされることになる。

(追加取材: ハンナ・チョルノス、サンヤラト・ドクソネ)

(英語記事 Ukraine aid package could help Kyiv slow Russia’s advance

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0431xz8p9mo


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