2024年12月3日(火)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年4月16日

 先日、所用があって東北地方有数の漁港、気仙沼を訪れた際、珍しい場面に遭遇した。港の奥深く、漁船が泊まる岸壁に、クロマグロが姿を現し、悠然と泳いでいたのである。港を案内してくれた漁業者の方によれば、100キログラムはあるだろうと言う。

一時期は危機に直面していたクロマグロ資源の今は?(LUNAMARINA/gettyimages)

 「こんなことは、今までにほぼ見たことがない」と地元の人は口を揃え、珍しい光景を見に人々が集まってくる。「新聞社を呼んだほうがいいんじゃないか」との声も聞こえてくる。「100年に1度あるかないかというようなものを見ましたね」と案内してくれた方も言う。

気仙沼湾内に姿を現したクロマグロ(筆者撮影)

 さすがに湾内にクロマグロが姿を現すのを見かけるのは非常に珍しいことであるかもしれない。しかし、クロマグロが急速に増えているとの声は各地の漁業者からしばしば聞くようになっている。

「歴史的最低水準」からの転換

 時を遡ること僅か10年前、状況は全く逆の状況にあった。国際的なアセスメントを担当している北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)は2013年、この資源が初期資源量比で3.6%と歴史的最低水準にあると評価、国際NGOの国際自然保護連合は14年に太平洋クロマグロを絶滅危惧種に指定、このことは新聞やその他のマスメディアでも広く取り上げられた。

 太平洋クロマグロは日本近海で生まれ、その多くが日本周辺の海に棲息することから、国別でみると漁獲量の大半は日本が占める。しかし漁獲は日本だけに止まらないし、太平洋を広く回遊することから、「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」という国際機関の下で管理されてきた。

 厳格な資源管理策は、短期的には漁獲減を招くことが見込まれるため、日本は当初厳格な規制を嫌がり、これまで漁獲統計のある1950年代前半からのデータから推定される中間値をとりあえずの第一次回復目標とすることでWPCFC関係各国の合意を取り付けるとともに、これで足りると主張した。確かにこの程度の目標なら、さしたる漁獲削減を行わなくてもよいが、これは初期資源量比で僅か数%にしかならず、目標としては余りに低すぎる。


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