2024年11月21日(木)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年3月19日

 獲れる魚の減少が止まらない。農林水産省統計によると、1984年に1282万トンだった漁業・養殖業生産量は、以下右肩下がりを続け、2022年現在で386万トンと、過去最低を更新した。国連食糧農業機関(FAO)統計によると、世界では漁業・養殖業生産量は右肩上がりを続け、直近のデータである21年現在史上最高の2億1837万8000トンを記録したのとは対照的である。

漁獲高の減少により、漁業関係者の収益も減っている(NithidPhoto/gettyimages)

 魚が獲れなければ、当然漁業者の収入はままならない。農林水産省「漁業経営に関する統計」によると、22年度現在沿岸漁船漁業漁家の漁労所得は僅か136万円である。なり手不足のため漁業者数は急速に減少しつつあり、農林水産省「漁業構造動態調査」によると、10年に20万2880人だった漁業就業者は、わずか12年で約4割も減少し、12万3100人となっている。

趣旨は良くできている「積立ぷらす」

 多くの漁業者が漁獲量と収入の減収に苦しむなか、漁協の全国団体であるJF全漁連など一部の漁業団体が強く要望し、拡大を続けていたのが「積立ぷらす」と呼ばれる漁業者に対する減収補填プログラムである。

 拙稿「漁師を補助金漬けにする個別所得補償」でも触れたことがあるのだが、民主党政権下でマニフェストの目玉として実施された農家に対する個別所得補償政策の漁業版として発足したものである。自民党へ政権交代後も、上記漁業団体の強い要望により継続されている。

 24年度予算でも「漁業収入安定対策」という予算項目のもと、582億円と水産予算全体の18%を占めており(前年度補正含む。以下同じ)、漁港整備などに充てられる水産公共予算(1127億円)を除けば、水産予算の中で占める割合が最も高い予算項目と言える。水産資源調査・評価に充当される予算が前年補正含めても107億円、全体の3%に過ぎないのとは対照的である(図1参照)。

 この減収補填プログラムは、実は水産資源調査・評価と同じ「海洋環境の変化も踏まえた水産資源管理の着実な実施」という大項目の下にある予算アイテムである。つまり、資源管理のため、というのが建前となっているのである。この減収補填プログラムは、漁業者が自発的に策定・実行する「資源管理計画」とセットになっている。

 漁業者が意欲的に資源管理に取り組み、対象とする魚種の再生産に重要な海域や時期に禁漁区や禁漁期間を設定したり、乱獲を防ぐため、あるいは減少した資源の回復を図るために出漁日数を大幅に減らすなどの計画を策定・実施したならば、これに伴って漁獲量と漁獲収入の減少が予想される。他方同一の魚種を獲っている他の漁業者がこうした措置を取らないなら、真面目に資源管理に取り組む漁業者のみに過重な負担をかけてしまう。そこで、資源管理計画を策定して実行した漁業者に対しては、収入が減少した場合、直近過去5年のうち一番収入が良かった年と悪かった年を除いた3年間の平均収入額の原則90%までを補償しよう、というのがこの「積立ぷらす」と呼ばれる減収補填のための積立金であり、これに国は税金から4分の3を補助している。


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