日本の水産業の衰退が止まらない。漁業・養殖業生産量は1984年の1282万5900トンをピークに低落を続け、2022年には70%減の385万8600トンと過去最低を記録した。他方、国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の漁業養殖業生産量は増加を続け、21年現在史上最高の2億1800トンを記録している。
世界では水産業が成長産業化し拡大を続けているなか、日本が「一人負け」の状態にある。魚が獲れなければ、儲かるはずがない。農林水産省統計によると、22年度現在沿岸漁船漁業を営む漁家の平均漁労所得は136万円である。状況は極めて厳しい。
民主党政権から続く手厚い支援
こうしたなか、業界団体が強く要望し、増額を続けてきたのが、公共事業と補助金の投入である。今や日本全国に漁港が整備され、さまざまな形で補助金が供与されている。現状のところ、補助金なくして日本の水産業は成り立っていない。
なかでも手厚い支援がされているのが、現在「漁業収入安定対策」という予算費目の下に実施されている漁業者への減収補填プログラムである。これはもともと民主党政権下でマニフェストの目玉として実施された農家に対する個別所得補償政策の漁業版として発足したものであり、11年の発足時には同年度水産予算2022億円の4分の1を占める510億円という、当時の水産庁担当者が「水産庁始まって以来の大型事業」と形容する規模で開始された。
民主党の政策を否定する自民党安倍政権下で農家への個別所得補償政策が廃止されたにもかかわらず、漁業者減収補填プログラムに関しては関係団体の強い要望により継続されてきた。ただ年々その額は減少し、18年度予算では114億円となっていたが、18年に通過した漁業法の改正に基づく水産政策改革に伴って水産予算が18年度の2327億円(前年度補正含む)から3000億円台に一挙に増額されるに伴って再び膨張し、23年度は582億円と、民主党政権下での発足時を上回る額となっている。
24年度予算案はやや減じて427億円となったが、この予算費目は基金化され年度内に使い切ってしまわなくてもよく、「前年予算で必要額を一定額プールできていた」ことが背景にあると水産庁は説明している。この予算項目だけで、24年度水産予算の14%を占めている。