2024年11月23日(土)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年2月1日

 少なくとも、PDCAサイクル「改善(Act)」がされているとは考え難い。資源管理計画は何をやっているか秘密、評価はザル、改善はゼロ、制度に定められたPDCAサイクルは名ばかりで、まさに「絵に描いた餅」と言わざるを得ない。

 なお、北海道を含め、過去5年間の資源管理計画の評価結果の詳細を他の都道府県にも行ったところ、いずれも評価の具体的内容を記した文書の開示決定を行っているのだが、唯一島根県は文書を作成していないとして非開示の決定を行い、得られたのは全資源管理計画に対して現行措置の継続という合格点を付したことを示す紙4枚の資料(これらは水産庁のHPで公開されている)のみであった。

 「当県においては、漁業者の漁獲データを把握するためのシステムを整備して」いるからというのが、文書をそもそも作成していない理由だそうである。評価・検証を行った具体的証拠が存在しないというのは、実に驚くべきことである。

 島根県の公文書非開示決定通知書。評価結果の詳細を文書として作成していないとしている。

求められる国費投入に対する説明責任

 繰り返しになるが、漁業者に対する減収補填プログラムは、漁業者がまじめに自主的資源管理措置に取り組んでいることを前提とするものである。その前提が担保されないことは、制度上容認されるべきものでない。

 もしこのプログラムが、これに参加する当事者のみが費用を負担している私的なものであるならば、特に問題はないかもしれない。参加するもしないも、費用を払うも払わないも、当事者のみの問題である。しかしこのプログラムは、単体で水産予算の2割を占めるという、国費すなわち税金を投じたものである。

 税金を投じたものである以上、われわれ国民に対する説明責任がなければならないし、制度の主旨を歪めた運用は容認されるべきでない。そのような運用は、まさに無責任極まりないのである。

 漁業法の改正に基づき、今年度より「資源管理計画」は全てその内容の公開が予定されている「資源管理協定」への移行が予定されている。これまでの「資源管理計画」の不透明さと実効性の薄さに対する懸念を反映したものであると言える。この移行を予定通り行い資源管理協定はその内容を全て公開するとともに、公開された資源管理協定で資源管理に無意味なものがあったとすれば、補助金すなわち税金の投入は容認されるべきでない。

 水産資源は、補助金の投入を求める一部の漁業団体だけのものではなく、われわれ国民全てのものである。そしてそれは、将来世代のために、持続可能なかたちで利用すべきものである。本来の趣旨に立ち返った、制度の運用が望まれる。

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