2024年5月16日(木)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年2月1日

 そこで幾人かの北海道の漁業者に尋ねてみたところ、墨塗りにしている箇所は一定の休漁期間を定めているものであったり、体長制限を設けているものであったり、魚の放流を定めているものであったり、漁業者の「競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位」を損なう恐れがあるとは考えにくいものであった。

 各自治体の情報公開条例に基づき同様の開示請求をしたところ、北海道と同様に開示を拒否した都道府県がもう一つだけ存在する。島根県である。

 「資源管理計画に参画する者の操業等に関する情報であり、公開することで競争上の不利益を与える」ことを理由とし、「自主的管理措置」の内容が全て墨塗りとなっている。ただし、自治体による履行確認が入らず、また実施せずとも「検討」するだけでよい措置については開示されている。

 漁業者に対しては資源管理計画を前提とする減収補填プログラムとは別に、漁業所得の向上を目指す「浜の活力再生プラン」という事業があり、同事業の承認を受けた漁業者には、関連する国の支援が受けられる。そこで島根県における当該事業に関して取り組んでいる「自主的休漁措置」をみてみたところ、毎週土曜日を休みとすることがその内容であることがわかる。

 もしこれが資源管理計画の「自主的管理措置」であるならば、こうした内容を開示することが「公開することで競争上の不利益を与える」と言えるのだろうか。また週1日仕事を休みとするとが、一体どのような資源保護効果があるのだろうか。

開示された島根県の資源管理計画の一例(刺網漁業)(上)と島根県(松江)の「浜の活力再生プラン」の資源管理に関する記述(下) 写真を拡大

改善ゼロ、絵に描いた餅のPDCAサイクル

 国が定めた「資源管理指針・計画作成要領」によると、作成された資源管理計画は、策定後4年を経過した次の年度に外部有識者が参加する資源管理協議会が計画の内容が適切かどうか等について評価・検証し、この結果を踏まえ、管理措置の内容等の見直しを図ることを通じて「計画(Plan)、実施(Do)、評価(Check)、改善(Act)のPDCAサイクルを着実に実施する」としており、このため各都道府県には資源管理協議会が設けられている。

 例えば資源管理計画の内容を「完全墨塗り」とした北海道にしても、道資源管理協議会を設置して資源管理計画を合格点の「A」(取組を継続)から「D」まで4段階評価し、適宜改善を図ることされている。しかし、情報公開請求を通じて北海道資源管理協議会が過去5年間に行った評価・検証を入手したところ、結果は以下のようなものであった。

 北海道は17年度から21年度にかけて、合計385の資源管理計画の評価・検証を実施しているが、そのうち合格点の「A」評価は385と、全体の100%であった。17年度に1つの資源管理計画が「C」評価の「資源管理の取組方法の改善を検討」、21年度に1つの資源管理計画が上記「C」評価および「D」評価の「水産研究機関の指導のもと、取組内容を再検討」がなされているが、これらはいずれも同時に合格点の「A」評価がされており、現状の取り組みを継続するのみで良いと判定されている。

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