2024年11月23日(土)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年2月1日

膨らむ漁業者損失補填プログラムへの補助金投入

 この減収補填プログラムは、「計画的に資源管理…に取り組む意欲のある者が、減収を恐れずにこれらの取組を実施することができるよう」支援することを狙いとして創設されたものである。

 この制度では、国と都道府県は「資源管理指針」を策定し、これに沿って関係する漁業者・団体が自発的な資源管理の取り組みとして「資源管理計画」を作成し、これを実施する。その計画が意欲的で思い切ったものであればあるほど、取り組む漁業者の漁獲量と漁業収入が減ってしまう恐れがある。

 例えば資源保護のためとして、操業日数を半減させる、長期間の休漁期間を設ける、あるいは自発的に予防的・資源保護的な漁獲枠を設けるなどの取り組みを行えば、収入の減少が予想されるだろう。そこで「積立ぷらす」と呼ばれる国が額の4分の3を補助する積立金を用意し、加入者の基準となる漁業収入(直近の5年間の年間漁業収入ののうち最高額と最低額の年を除いた3カ年平均額)の90%を下回った場合は、原則90%分までを補償するという仕組みになっている。なお、基準となる漁業収入の80%を下回った場合は、80%分までは漁業共済から補填され、こちらについても国が掛金額の平均70%を補助している。

 資源管理の強化により、やがて資源が回復すれば、取り組みを行った漁業者は中長期的にはより多くの資源を漁獲することになることが期待されるであろう。この制度は、資源管理に意欲的な漁業者の取り組みを支えることを企図していた。

「対策のポイント」として「計画的に資源管理等に取り組む漁業者を対象」とある 出所:水産庁「漁業収入安定対策事業」 写真を拡大

 しかしながら、この制度に関しては以前より、減収補填の前提となっている資源管理計画が形骸化しているものが少なくないのではないかとの疑念が持たれていた。そもそも、漁業者が取り組んでいる個々の「資源管理計画」自体、現状ではそのほとんどが公開されていない。一体どのような内容なのかがわからないのである。

墨に塗られた「資源管理計画」

 そこで筆者は、2022年現在海面漁業生産量289万3700トンのうち87万200トンと約3割を占め、これに次ぐ茨城県(27万1000トン)を大きく引き離し都道府県別第1位となっている北海道の資源管理計画に関して、その内容を明らかにするよう情報公開請求を行った。

 その結果開示された文書は、以下のようなものだった。

北海道が開示した資源管理計画の例。資源管理措置の部分が全て墨で塗られている 写真を拡大

  肝心の自主的な資源管理措置の内容が墨で塗られており、一体どのような資源管理策を実施しているのかが全くわからないのである。北海道庁によると、これら具体的な資源管理措置を全て墨塗りにしたのは、「開示することにより、当該法人等及び当該事業を営む個人の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が不当に損なわれると認められる」(北海道情報公開条例第10条)との理由であった。


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