2024年11月23日(土)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年3月19日

 では、その「休漁」の中身はどうなっているのか。それを示したものが図2である。

一部の道県では休漁措置の内容が、週1日を休漁とするか、換算して週1日(年間7分の1(約14.3%)、約52.1日)以下のものが非常に多い。しかしこのような「週一休漁」が資源管理に有効であるかは甚だ疑問と言わざるを得ない。

しかも、「週一休漁」という形ばかりの管理計画を策定し、土日や市場の空いていない日、あるいは海が時化た日に休みを取るだけで、漁獲収入が減少した場合、その9割までが多額の税金が投入されているプログラムで補填されることになる。

 さらに問題なのは、漁獲量が都道府県別で群を抜いて多い北海道、並びに漁獲量第9位島根県が、資源管理計画の内容の開示を一切拒否したことである。こうした資源管理計画が全くの自主的なものであるのならば、それで良いのかも知れないが、これは水産予算の中で最も拠出されている項目の一つとであり、国民の税金が投下されている。当然説明責任が果たされて然るべきである。それとも、実は資源管理計画の中身が形骸化しているものが多いので公開したくないとでも考えているのであろうか。そう訝られても仕方がない。

 以前の拙稿でも指摘したが、北海道と島根県については国の指針で求められている計画の定期的なレビューと見直しというPDCAサイクルもほぼ機能していない。国が定めた「資源管理指針・計画作成要領」によると、策定後4年を経過した次の年度に外部有識者が参加する資源管理協議会が計画の内容が適切かどうか等について評価・検証し、この結果を踏まえ、管理措置の内容等の見直しを図ることとなっているが、直近の5年で行われた評価結果を情報公開請求で開示したところ、島根県は該当する文書すら存在せず、北海道については全てが合格の「A」評価となっている。これでは評価と見直しは単なる絵に描いた餅である。

国際条約に抵触の可能性

 こうした杜撰な「資源管理計画」は、国際的な約束にも抵触する可能性がある。22年6月に世界補貿易機関(WTO)で漁業補助金協定が採択され、日本もこれを批准しているが、この協定では乱獲された資源に関する漁業への補助金が禁止される旨の文言が盛り込まれている(第4.1条)。

 但し、その補助金やその他の措置を通じて資源が持続可能な水準に回復するよう目指されている場合には,補助金供与が許されるとも規定されており(第4.3条)、「今回の合意で補助金を具体的に減らさないといけないとは捉えていない」というのが日本政府側の認識である(共同通信2022年6月18日配信)。

 しかしながら,「積立ぷらす」等により減収補填された漁業者が漁獲の対象としているものが乱獲された資源であり、かつ当該漁業者が実施している資源回復のための措置が「資源管理計画」しかなく、その内容が週1日休漁のみであるなど資源が持続可能な水準に回復することが目指されているとは見なし難い場合、漁業者に対する減収補填は漁業補助金協定で禁止された補助金に該当し得るだろう。また、そもそも乱獲資源に対する資源回復のための措置を講ずることなく漁業者に対して減収補填し続けることは、当該漁業資源に対する乱獲を助長させる結果となるだろう。

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