2024年5月18日(土)

BBC News

2024年5月4日

英イングランドで2日に行われた地方選挙で、4日午後までの開票の結果、与党・保守党の連敗が明らかになった。イギリスでは来年1月末までに総選挙が行われるため、それに先立つ最後の大規模な前哨戦だった今回の地方選は、保守党にとって過去最悪レベルの結果となった。

保守党は、候補を立てた議席の半数近くを失った。計10の行政機構で多数党から少数党へと転じ、地方議会で計473議席を失った。

対照的に最大野党・労働党は、主な行政機構の議会選や首長選、北部ブラックプールでの下院補欠選挙などで連勝した。地方議会で計185議席を増やし、8行政機構で多数党に転じたほか、ロンドンやグレーター・マンチェスターでの再選を含め11カ所の首長選のうち10カ所で勝利した。

ロンドン市長選では労働党現職のサディク・カーン氏が得票率43.8%と、保守党候補の同32.7%を大きく引き離し、27万6000票以上の票差で3選を果たした。

4日夜まで開票が続いたウェスト・ミッドランズ行政機構の首長選では、労働党の新人リチャード・パーカー候補が1508票差で、保守党現職を下した。

野党・自由民主党も、各地の地方議会選で計104議席を増やした。無所属候補は計93議席、緑の党は計74議席を増やした。

「歴史的勝利」と労働党党首

ウェスト・ミッドランズ首長選の勝利を現地バーミンガムで祝った労働党党首のサー・キア・スターマーは、「今回はまずブラックプールで票の26%が(労働党支持に)転じたのを皮切りに、ここウェスト・ミッドランズでは(労働党の)新人首長リチャード・パーカーが勝利するに至った。この間、各地の首長選や地方議会選、警察犯罪コミッショナー選挙でも、我々の候補が大勢勝利している」と喜んだ。

労働党新人が保守党現職を僅差で破ったウェスト・ミッドランズ首長選の結果を「予想外」の「快挙」だとスターマー党首は歓迎し、「(有権者は)もう14年も続く衰退とカオスと分断に辟易(へきえき)としている」のだと保守党政権を批判。リシ・スーナク首相に対してあらためて、総選挙の実施を強く求めた。

対するリシ・スーナク首相は選挙結果を「残念だ」と認めたものの、総選挙で労働党が勝つと決まったわけではないと強調した。

保守党が唯一勝利した首長選は、イングランド北部の合同行政機構ティースヴァリー。保守党現職のベン・ハウチェン氏が3選されたが、得票率は大きく後退した。

ハウチェン氏応援のため3日に現地入りしたスーナク首相は、ティースヴァリーでの勝利は「有権者は私たちを応援し続けてくれる」と示すものだと、空港で記者団に話した。

「(労働党は)総選挙で勝つにはここで勝つ必要があると承知している」ものの、「(有権者は)ティーサイドとイギリスの明るい未来を築いているのは保守党だと、承知している」のだと、首相は成果を強調した。

他方、新設された合同行政機構「ヨークおよび北ヨークシャー」には、スーナク首相の下院選挙区も含まれるが、首長選には労働党が勝利した。

労働党のスターマー党首はイングランド北部のノース・ヨークシャーで3日、「保守党地盤の中心地」における「歴史的な」勝利を喜び、総選挙への期待を示した。

「間違いなく歴史的な勝利だ。いつもなら労働党が勝てない場所で私たちは、成果を挙げて、労働党に投票するよう大勢を説得することができた」と、スターマー氏は喜んだ。

イスラム教徒の票は

今回のイングランド地方選では各地で労働党が連勝したものの、イスラム教徒の有権者が多い地区では、同党の得票率が2021年の前回選挙から後退した。

BBCが分析した結果、住民の5人に1人が自分はイスラム教徒だと申告している58カ所の行政区では、労働党の得票率が2021年選挙から21%減少している。

これは、パレスチナ自治区ガザ地区での戦争に対する労働党の姿勢が影響した可能性が指摘されている。

昨年10月にガザ戦争が始まった当初、労働党は人道的一時休戦を求めた。それでは不十分だと抗議する複数の地方議員や下院議員が、これを受けて党内ポストを辞任した。ガザ戦争に対する党の方針を一本化するまでに数カ月かかり、労働党が即時停戦を求めたのは今年2月になってのことだった。

イスラム教徒の票を失うことを懸念しているか質問されたスターマー党首は4日、「この件がなければ労働党に投票したはずの人を私たちが説得できていないことについては、それを私が認めることが大事だと考えている。そして、皆さんの意見に私は耳を傾けているし、皆さんの懸念に確実に応えていくと決意していると申し上げたい」と答えた。

ただし、労働党がムスリム(イスラム教徒)票を失うことで総選挙に実際にどう影響するのかは、不透明な情勢。労働党がムスリム票を大きく減らすと予想される地域は、すでに労働党支持が盤石な場所と重なるという結果も出ている。

人口の15%超が自分はイスラム教徒だと申告しているロンドン市内の地区では、労働党の得票率は3ポイント上昇した。イスラム教徒の割合がそれより少ない同市内の地区では、平均4.5ポイント上昇した。

ロンドンのカーン市長(労働党)は、党より先にガザ停戦を呼びかけていた。

イスラム教徒の人口が多い地域で今回、労働党が票を減らしたことは、無所属候補や緑の党に有利に働いた。ガザ戦争開始から約1週間後にすでに「即時停戦」を呼びかけた緑の党は今回、地方議会で74議席を新たに獲得した。

緑の党のカーラ・デニヤ共同党首は、労働党の数々の方針転換にもともと不満だった労働党支持者の中には、ガザ戦争への姿勢が「決定打」となり、労働党支持をやめた人たちがいると指摘。「(ガザ問題が)重要だと進んで話す有権者に、戸別訪問で大勢会った」と、デニヤ氏は話した。

デニヤ党首によると、北東部ニューカッスルの市議会で緑の党が初議席を獲得したのも、「ムスリム住民の一部が投票先を切り替えた」ことが要因のひとつだという。

これが総選挙だったら……

今回の開票作業は5日まで続く見通し。イギリスの選挙研究者、英ストラスクライド大学教授のサー・ジョン・カーティスは、保守党にとって過去40年来で最悪レベルの選挙結果になるだろうと話した。

カーティス教授は、2日の選挙が全国的なものだった場合、そして有権者がどの地域でも今回投票した人たちと似た傾向で投票したと仮定すると、得票率は労働党34%、保守党25%になっていただろうと推定した。

総選挙でどう投票するか、今回の地方選の直前に有権者に尋ねた全国世論調査では、労働党が最大20ポイント、保守党にリードしていた。

(英語記事 Election results: Labour adds to Tory misery with mayoral wins/ London mayor election: How Sadiq Khan won over London for the third time/ Labour must rebuild trust with Muslim voters, says senior MP/Curtice: Sheer scale of defeat will worry Conservatives/ Tories hit by big council losses in last pre-general election test

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c4n12rydr38o


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