過去を振り返る営みを〝忘却した〟時代ともいえる平成。失われた「憂う」「惜しむ」「悔やむ」感情を回復するためにも、歴史を取り戻す試みが必要だ。「Wedge」2024年5月号に掲載されている「平成全史 令和の日本再生へ 今こそ知りたい平成全史」記事の内容を一部、限定公開いたします。
昭和とは、過去を背負い込みすぎた時代だった。そして令和のいま、私たちは未来を過剰に背負わされている。
われこそは未来の使者だと自称する人が次々に現れては、「将来生まれる子どもたち」の名を語って(騙って)私たちを非難する。いわく、彼らが温暖化した地球で苦しまないように、火力発電所を止めるべきだ。一方でやはり彼らのために、原子力発電所もなくすべきだ。
はたまたAIとロボットが全てを担う、地球のどこでも実現を見ていない社会の基準で、他人の仕事を「消える」「要らない」と侮辱する。やはり現状では採用する国のない、ベーシックインカムが実施されると勝手に想定して、だから働く意欲も必要もないと居直る。
どうして、こんなことになったのか?
その鍵を握る時代が平成だ。それは日本人が歴史を見失い、過去を振り返る営みを忘れ、ありもしない未来に釣られて蠢く群れのようになる30年間だった。