自民党の麻生太郎副総裁がトランプ米前大統領と会談した。秋の大統領選まで半年、現職バイデン大統領と、カムバックめざすトランプ氏が接戦を展開しているだけに、現政権に対して非礼になるなどと一部で批判がなされている。しかし、国際関係の現実を考えれば、選挙の展開をにらみながら、両陣営に接触するのは、むしろ重要なことだろう。
問題は、安全保障、貿易摩擦など個別案件の調整ではなく、トランプ氏の独自、〝特異〟な価値観と、同盟国、友人としてどのようにかかわっていくかだ。過激な言動に対して臆せずモノを言い、率直な忠告によって胸襟を開いた関係を構築し、普遍的な価値観にトランプ氏を引き戻すことができるか。
それができずに、うわべだけの関係を続ければ、各国に対し、日本の政府、国民はトランプ氏と同じ主義主張を共有しているのかとの印象も与えかねない。国の品格すら問われるだろう。
トランプからホワイトハウスの鍵贈る
麻生氏―トランプ会談は4月23日(日本時間4月24日早朝)、ニューヨーク5番街、トランプタワーにある氏の自宅で1時間にわたって行われた。通訳を通さず英語でのやり取りだったという。
トランプ氏が不倫口止め料をめぐって起訴された事件で裁判所に出廷した日だったにもかかわらず、記者団に対し「日本のことは好きだ。今日は裁判所でいい日を過ごしたよ」などと上機嫌だった。
各メディアによると、「日米関係の重要さはゆるがない」ことで一致し、 麻生氏は岸田政権による防衛費の大幅増額などを説明、トランプ氏はこれを評価した。トランプ氏は麻生氏に、ホワイトハウスの図柄をあしらった木箱に入れた金色のカギをプレゼント、「岸田首相によろしく」と伝えた。
麻生氏がトランプ氏と会談したのは、11月の選挙で氏が返り咲く可能性を考慮、関係を強化し、人脈拡大につなげたいとの思惑からだろう。