ホワイトハウス復帰を果たしたなら、自らを訴追した連邦検事らを罷免、氏が扇動したといわれる連邦議会襲撃事件(21年1月6日)で有罪となった800人にものぼる被告に恩赦を与えるとの方針を示し、バイデン大統領の〝犯罪〟を捜査するための特別検察官を任命する意向を表明している。
ことし2月には、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が十分な国防費を支出しない場合、「米国は彼らをロシアから守らない。ロシアにやりたいことをやるように勧める」と、その侵略を助長するような発言をして世界中を仰天させた。
こうした言動は、さすがに熱烈なトランプ支持者でも、多くは賛同、支持をはばかるだろう。自由と民主主義という各国普遍の価値観とはとうてい相いれない。
トランプ氏は最近、遊説先のオハイオ州で「自分が当選しなければ国中が火の海になる」「移民は野蛮な動物だ」などと暴言を吐いたが、この時は、支持が圧倒的に強い共和党内でも、トランプ氏に投票しないという人が急激に増えたと米ABCニュースが伝えた。人気急落ぶりは、乱暴な言動が支持層からも嫌悪されていること示す証左といっていい。
「真の友人は正面から刺す」
米誌「Newsweek」電子版(4月24日)は、元首相との会談で、トランプ氏がホワイトハウスをあしらった鍵をプレゼントしたことを取り上げ「すでに大統領気取りだ」「どれほどの意味があるのか」などと揶揄。「トランプがカギをプレゼントしたのはこの火曜日だ。(任期中の)17年から21年までの間ではない」「彼は妄想者だ」などソーシャルメディアへの投稿を紹介、激しく批判した。
麻生氏への直接の言及はないが、どういう評価を持っているかは行間から明らかだろう。安倍氏のトランプ氏との信頼関係にしても、当時すでに米国内の一部メディアで、「へつらい」などと酷評されていた。
故安倍氏には不本意な悪評だろうが、こうした評価がなされた理由と思われるひとつを指摘したい。
19年、フランス・ビアリッツで開かれたG7サミットで、トランプ大統領が同会議から追放されたロシアの復帰を提案した。各国首脳はいずれも「時期尚早」と反対したが、安倍首相だけは、「ロシアの建設的な関与が必要だ」と同調した。
各国には安倍氏の「媚」と映ったかもしれない。シンゾウードナルド関係の暗部だろう。
第二次トランプ政権が実現した場合、親しい友人である日本が、大統領の高圧的な姿勢に気圧され、〝報復〟をおそれて、何ら忠告もできなければ、日米同盟は岸田演説とは裏腹に、表面的な関係に後退、日本は世界からも嘲笑されよう。
「真の友人は正面から君を刺す」というのはオスカー・ワイルドの言葉だが、日本の官民はいまこの言葉をかみしめてみるときだろう。