「政治はカネ次第」の象徴ともいえる米大統領選に向け、バイデン、トランプ両陣営による選挙資金集めがし烈化している。もっぱらバイデン氏側が先行気味だが、あいつぐ裁判関連での莫大な弁護費用の出費を迫られるトランプ氏側も懸命の巻き返しを図っている。
制度変更でタガが外れた資金集め
米国大統領選挙につぎ込まれる資金規模は、今世紀に入って以来、民主、共和両党候補ともに顕著に拡大してきた。
2000年以来の4年ごとの大統領選挙で両陣営が費やした資金総額は、2000年(14億3000万ドル)、04年(19億1000万ドル)、08年(27億9900万ドル)とうなぎのぼりとなり、12年(26億2100万ドル)、16年(23億8600万ドル)こそ微減となったものの、前回20年選挙では一挙に57億ドルと、史上最高額を記録した。
今年はそれをはるかに上回る額に達しそうだ。
前世紀時代には連邦選挙委員会(FEC)による厳格な規制である程度抑えられていた選挙資金規模がこのように膨張し始めた背景には、最高裁判断などにより無制限に政治献金が可能となった「特別政治活動委員会(スーパーPAC)」と呼ばれる政治資金管理組織の存在がある。
米国では通常、個人が特定候補相手に選挙ごとに献金可能な額は連邦選挙運動法により、一人3300ドルに制限されているが、候補者はこれ以外に「スーパーPAC」を通じた資金であれば無制限に集められ、TV広告などに存分に注入できるようになったからだ。
個人以外に組織として特定候補を支援する手段としては、以前から“スーパー”ではない普通の「政治活動委員会」が活躍してきた。しかし、両者は支援の形態、規模において大きな違いがある。
これまでの「政治活動委員会」は、1組織あたり個人から最大5000ドルを限度に集めることが認められており、立ち上げた多くの「委員会」を通じ候補者に資金が流れる仕組みになっていた。しかし、労働組合や企業などからの資金集めは禁じられてきた。
このため、候補者から見て、個人献金に制限がある同委員会を通じた資金だけでは、メディアが多様化し、出費が膨らむ一方の選挙運動を支えるにはおのずと限界があった。
これに対し「スーパーPAC」の場合、多くの企業や億万長者などの個人から無制限に資金を集めることができ、その資金をもとに主張や立場を共有する特定の候補を支援するためのTV・インターネット広告などの費用に思う存分充てることができる。