「スーパーPAC」は、候補者に直接資金を回すことは禁じられてはいるものの、候補者に同調する個人献金者たちからの潤沢な資金をさまざまな宣伝活動に投じることができるため、公正な選挙活動を監視する団体などからは「事実上の政治献金行為であり、金権政治の温床になっている」といった批判もある。
しかし、今のところ、FECなどの公的機関は、多くの企業や個人が特定候補のPR活動をバックアップする行為を規制すること自体、参加民主主義の精神に反するとして、黙認状態となってきた。
一歩リードするバイデン陣営
ちなみに、前回大統領選挙が行われた20年の場合、議会選挙なども含めさまざまな宣伝活動を通じ候補者を盛り立てた「スーパーPAC」は大小合わせ2万415団体、支出総額は25億ドルにも達しており、この中には「全米不動産協会」(390万ドル)、「全米ビール飲料協会」(310万ドル)、「AT&T」(274万ドル)といった大口出資者が含まれた。
このうち、大統領選では、「スーパーPAC」からバイデン陣営に16億ドル、トランプ陣営に11億ドルに上る資金が選挙費用としてつぎ込まれた。
資金規模だけを見た場合、バイデン氏側がトランプ氏側を5億ドルも上回ったことになるが、果たしてこれが、バイデン勝利の決定的要因でなったかどうかについては、専門家の間でも判断が分かれている。
しかし、今回選挙では、前回以上のデッドヒートが予想されるため、バイデン、トランプ両陣営にとって、莫大な費用を賄うためにも、もっぱら、この「スーパーPAC」をさらに今後、いかに多く組織し、いかに多額の資金を集められるかが今後の選挙戦の重要な要素になるとみて、各方面への働きかけに躍起となっている。
今のところ、バイデン陣営の代表的「スーパーPAC」として「Future Forward」、「Unite The Country」、トランプ陣営の「Make America Great Again=MAGA」の存在などがある。
このうち、政治献金の監視組織として知られる「Open Secret」のデータによると、「Future Forward」はすでに2億5000万ドル、「MAGA」が5100万ドルをそれぞれプールし、TVやネット広告などの宣伝活動に乗り出す構えだ。
その後も、バイデン陣営では、大口献金者を含めた集金活動が勢いを増しつつある。 「バイデン再選委員会」は去る4月6日、前月1カ月間だけで「9000万ドル以上」の資金を集め、手元の銀行プールも「1億9200万ドル」に達したことを明らかにした。
この中には、小口献金も合わせ全米各州にまたがる160万人のバイデン支持者からの出資が含まれているという。
同陣営の財務責任者も、米ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで「気まぐれでうわついた世論調査ではなく、こうした実際に自分の懐からお金を出して応援してくれる人がいかに多いかが勝負の分かれ目になる。わが方の勢いは止まらない」として今後の資金集めにも自信を深めている。