2024年12月5日(木)

キーワードから学ぶアメリカ

2024年3月28日

 秋の米大統領選挙に無所属から立候補を表明しているロバート・ケネディ・ジュニア氏が、副大統領候補に女性弁護士のニコール・シャナハン氏を選んだと発表した。ケネディ氏はトランプでもバイデンでもない「第三の候補」として、その動向が注目されている。
 ケネディ氏の当選の可能性は低いにもかかわらず、なぜ、注目されるのか――。それには、米大統領選の独特の仕組みが影響している。過去の第三の候補の歴史も含めひも解いた2024年1月30日に掲載した「【解説】米大統領選挙に投じられる大半の票は無駄?トランプでもバイデンでもない第三の候補が結果を決める可能性」を再掲する。
「第三の候補」として立候補を表明しているロバート・ケネディ・ジュニア氏(右)と、副大統領候補のニコール・シャナハン氏(ZUMA Press/アフロ)

 2024年の米国大統領選挙は、1月15日、アイオワ州で共和党の党員集会で始まった。一般有権者は大統領を決定するために11月5日に票を投じることになるが、ほぼ1年という長い時間をかけて行政部の長を決めるのを見て、米国の民主政治は素晴らしいと思う人もいるだろう。

 民意に基づき、最大の支持を得た人物が大統領に就任するというイメージは強い。2016年に多くの予想に反してドナルド・トランプが勝利した際にも、米国民の本音が示されたという論評が頻繁になされていた。

 だが、実際には大統領選挙の結果は、少数の有権者の票で決まっており、大半の人の票は実際は「無駄」なのだ、と言ったら驚くだろうか?

6割の州で結果は決まっている

 2024年大統領選挙は、今のところ「バイデン対トランプ」の構図となる可能性が高い。選挙まで10カ月ある今の時点で、大統領選挙の結果を予想しても意味がないだろう。だが、全米50州のうち、40以上の州ではどちらの候補が勝利するかが既に決まっているといっても過言ではない。

 大統領選挙は全50州とコロンビア特別区(首都ワシントンDC)に割り当てられた大統領選挙人の数で決まる。大統領選挙人の総数は538で、270以上の票を獲得した人物が勝者となる。

 そのため、政党は全米各州で選挙戦を展開するのだが、実は2000年以降で、カリフォルニア、ニューヨーク、テキサスなど多くの大統領選挙人を擁する州を含む33州が同じ政党を勝たせている。そのため候補者が誰になっても、よほど特殊なことが起こらない限り、カリフォルニアやニューヨークでは民主党が勝利するし、アラバマやオクラホマでは共和党が勝利すると予想できるのである。

 そのような状態のため、2020年大統領選挙では、二大政党が本格的に選挙キャンペーンを展開したのは10州と2つの下院選挙区(メイン、ネブラスカ)のみだった。もちろん、結果が予想できるカリフォルニアやテキサスに二大政党の候補が入ることもあるが、それは有権者の支持獲得を目指してというよりは、多額の献金をしてくれる支持者との面会が主目的である。

 上述の10州と2選挙区に住んでいる人は米国民の4人に1人にすぎず、今回はフロリダが接戦州ではなくなるため、その割合は18%に低下するとワシントンポストは予想している。

 今日では二大政党が集める選挙資金は大幅に増大しているにもかかわらず、それが2割以下の有権者の支持獲得のために主に用いられるというのは衝撃的だ。さらに言うならば、今日では選挙技術が進展していることもあり、投票行動を変える可能性がある人々(投票するか棄権するかを決めていない人や、支持政党を変更する可能性のある人)にしか二大政党は接触しなくなっている。このような少数者の意向が選挙結果を左右しているのであり、残りの8割以上の有権者の票は、極論すれば投じられても投じられなくても結果に影響しないのである。


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