2024年11月22日(金)

キーワードから学ぶアメリカ

2024年3月28日

 米国は民主主義を体現する国だという自己意識を持っているにもかかわらず、大統領選挙の投票率は高くても5割くらいである。その背景には、有権者登録の面倒さなどさまざまな要因が指摘されているが、投票に行ってもいかなくても選挙結果が変わらないことを分かっている人が多いことも間違いなくあるだろう。逆に言えば、投票してもしなくても結果が変わらないにもかかわらず、半数近い人が投票に行っているというのは「立派」だということもできるかもしれない。

 これまでの大統領選挙では、一般投票でより多くの票を獲得した人が大統領になれないという事態も発生している。2000年のアル・ゴアや16年のヒラリー・クリントンなどがその例である。だが、上述のような事情を念頭に置くと、実際にはどちらかの候補を支持しているにもかかわらず「合理的」に行動した結果として棄権する人も多数存在するので、投票結果が民意を反映しているとも言えないことは念頭に置いておくべきだろう。

6つの接戦州の動向

 2024年大統領選挙では、6つの接戦州の動向が結果を決めるのではないかと指摘されることが多い。ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシン、ネバダ、アリゾナ、ジョージアの6州である。

 ノースカロライナ、バージニア、ミネソタなど、場合によると結果が変わる可能性があるといわれる州も存在するが、先の6州と比べると可能性は低いと考えられている。そして、近年の選挙を見ると、16年選挙ではネバダを除く5州でトランプが勝利して、最終的にトランプが勝利した。

 20年選挙では全州でバイデンが勝利し、大統領に就任した。この6州の結果で大統領選挙の結果が変わる可能性があるといわれるのは、このような事情を踏まえてのことである。

 では、これら6州ではどちらが勝利すると考えられているのだろうか。実は、各種世論調査では、「バイデン対トランプ」で比較した場合、ウィスコンシンを除く5州でトランプがリードしている。そのため、「現状ではトランプが有利」という報道が時折なされている。だが、これら6州での「政党支持率」を比較した場合、アリゾナ、ミシガン、ネバダ、ペンシルベニアで民主党がリードし、ジョージアとウィスコンシンではほぼ同率となっている。

 大統領候補に関する支持率は、候補がとんでもない発言をしたり、不測の事態が起こったりすると変わる可能性がある。他方、政党支持率はあまり変化しない。このようなことを考えると、トランプ有利と断じるのが適切でないことがわかるだろう。

 このような接戦州の結果は、伝統的には経済の状態によって決まると指摘されてきた。だが最近では、失業率などの客観的指標をみると経済の状態は良いとされているにもかかわらず、世論調査では経済状態が悪いと認識する人が多いなど、経済に基づいて選挙結果を予想するのは容易ではなくなっている。

 そして、今年の大統領選挙については、二大政党以外の候補者が誰の足を引っ張るかによって結果が変わるのではないか、とも指摘されているのである。


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