2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月1日

 2024年3月7日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、中国経済は、成長よりイデオロギーに優先度が与えられ、成長目標を達成するための信頼できる政策が脱落しているとする社説を掲載している。

全人代で、中国経済が習近平のイデオロギーが反映されていることを見せた( Kevin Frayer /gettyimages)

 今週北京で開催されている全国人民代表大会(全人代)での李強首相の初演説は、過去にその国を強く支配していたイデオロギーが再び噴火した印象を与えた。李強首相は、習近平を毛沢東以来の中国最強の指導者であると持ち上げたが、中国政府が経済的障害をどのように克服するかについては、具体的な説明は何もしなかった。 

 李首相は今年の国内総生産(GDP)の上昇目標を「約5%」と設定したが、目標達成のための政策についての説明はなかった。その経済政策の目標としては、技術面での自立や経済面での安全保障などの優先順位が上げられた。このことは、中国政府がもはや経済成長を経済目標の主眼としないことを示している。

 李強首相は、23年の成果は、「新時代の中国の特色ある社会主義」を説く習近平思想の健全な指導のおかげだと強調した。中国の政策目標の主眼は、繁栄の創出ではなくイデオロギーの強化なのだということが認知できる。国際資本は、中国から離れ、日本、インド、東南アジア、その他の市場へ流れ始めている。

 中国政府の昨年の公式発表成長率5.2%に続いて今年は「約5%」の目標を達成するのだという楽観論に根拠があるとは思えなかった。消費者物価は深刻なデフレ現象を示しているのに、同首相の演説には個人消費の上昇を促す具体的経済計画は全く含まれていなかった。昨年の報告書の最優先事項であった内需拡大の目標は、今年は第3位に格下げされ、上位の目標は、「産業システムの近代化」と「質の高い新たな生産能力の開発」という2つの産業政策的目標だった。


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