財政分野では積極的政策が一つ発表された。「安全保障の重要分野」に資金を供給するため、中国政府は1兆元(1390億ドル)の特別国債を発行するという。
中国政府の安全保障重視を示すもう一つの兆候は、李首相が国防費を経済成長の目標率を上回る7.2%増額し、1兆6000億元にすると発表したことに現れている。中国は米国に次いで世界第2位の国防予算を有し、李首相は「外部からの干渉」に反対すると発言していた。
中国が経済成長よりも安全保障、技術そして自存を進める経済政策を優先することには、現実の危険が伴う。不動産市場の低迷、地方政府の負う多額の債務、デフレの深刻化、若者の高失業率など、この国の脆弱性は経済成長を必要としている。
しかし、宣言した成長率の目標を達成するための具体策を中国政府が有している証拠はほとんどない。経済がイデオロギーに感染すれば、急激な経済的破綻が発生しかねないという中国自身の歴史からの警告を、中国は教訓として学び取るべきである。
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中国経済の4つの問題点
中国の経済成長率に関し、12年までは、政府の当初の目標値と事後の実績値には乖離があった。ところが、習近平政権が成立した12年以降は、政府目標値と事後に計測される実績値が「奇妙にも」一致している。
このことは、実測値の信憑性に疑念を抱かせる。現在の成長率は1%以下ではないかとする中国経済研究者の分析さえある。
故李克強首相の時代には、国務院は特に経済分野に関しては経済合理性に基づき政策を立案し執行しようとしていたが、一昨年の第20回党大会で習近平総書記が三選され、政治局常務委員がその息のかかった者で占められて以来、党高政低が一層進み、政府の諸活動は党の決定を執行する実行部隊という性格を強めてきている。
今次全人代で国務院組織法改正案が成立し、権力が国務院(政府)から共産党に更に移行し、政府は共産党の指導を単に忠実に実行する組織としての性格を一層強めることになる。この論評の中での用語を借りれば、経済政策の分野でもイデオロギー化が進行する。
中国経済の問題には、過剰債務問題、不動産市場の低迷、個人消費の回復力欠如、輸出の減少、という4つの要因があると言われる。