2024年4月29日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年2月19日

 2024年1月31日付のウォールストリート・ジャーナル紙で、同紙コラムニストのSadanand Dhumeは、「米国に不法入国してくるインド人や中国人がこの2~3年間に急増している。また、富裕層のインド人、中国人の合法的移住も多い。多くの人が逃げ出す事実は、両国を超大国の台頭と呼ぶにふさわしいか疑問を生む」と問題提起している。

(Naeblys/gettyimages)

 地政学の専門家は、今を「アジアの世紀」と表現する。中国とインドの経済的台頭が、500年にわたる西側諸国の優位に終止符を打つと考えている。しかし、中国とインドは、世界の移民の大部分を占めている。国の繁栄と安定が保証されているのであれば、なぜ高学歴者や富裕層を含む多くの人々が国外に出ようとするのか。

 23年度、インド人9万7000人、中国人5万3000人の不法入国者が見つかった。これは、21年度より、インド人は3倍以上、中国人は2倍以上である。

 昨年、約5万5000人の中国人と約6万9000人のインド人が、卒業後1~2年の実務研修を受けて、米国での就職を目指した。インド人は現在、メキシコ人に次いで2番目に多い移民グループである。 中国人は3位である。

 これらの移民パターンには、アジア世紀の信者が見落としがちな弱点がある。その一つは「富裕層」の流出である。

 繁栄している国は、通常、資本や人材を惹きつける。富裕層を流失させることはない。しかし、22年、中国は1万800人の億万長者を失っている。2位はロシアで8500人、インドは3位で7500人である。


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