中国の場合、習近平が、民間部門を弾圧したことが大きな要因である。中国人は長い間、米国永住権を許可するEB-5投資家ビザを、どこの国より多く取得してきた。また、西側のパスポートは、中国において政治的混乱が再来した場合の保険である。
インドでは統治が行き届いていないことが、富裕層や高い教育を受けた人材を国外に流出させる。彼らは汚染された都市、税務当局による嫌がらせ、劣悪な公衆衛生プログラム、粗末な都市インフラから逃れたいのだ。昨年インド人は、EB-5投資家ビザを2番目に多く取得した。
これほど多くの中国人とインド人が超大国と目される両国から離脱している事実は、両国の台頭が果たしてどれだけ必然的であるか疑問を投げかけるものである。
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国を捨てる人たちはどう動くか
デュームの指摘は、一国の発展を見る上でとても重要な視点である。一国の国力を判断する際、経済力や軍事力等のハードパワーは重要な要素ではあるも、同時に「思想・表現・宗教の自由があり、安心して生活できる国か」、「生まれに関係なく、頑張れば夢を実現できる公正・公平な社会であるか」等のソフト面も大切な要素である。正に、富裕層も含め国民が大挙して退避するような国を「世界の超大国」と呼ぶことが適切かという疑問は、忘れてはならない視点だと思う。
デュームは、裕福な中国人が、ビザを得て中国を脱出する理由(①習近平が民間部門を取り締まったこと ②習近平の強硬姿勢が国民を怯えさせていること等)に触れている。
不法入国中国人の場合、米国のテレビ報道等によると、概ね次のようである。
「ビザなし」で入国できるエクアドルまで空路で行き、車や徒歩、船などで中南米諸国を通って直線距離で約3700キロ離れた米国に向かう。これらの人たちの多くが中級クラス以上で、移動のために5000から1万ドルを払う。亡命理由は①中国の夢」という理念に幻滅した、②自由が欲しいということに加え、③イスラム教徒(ウイグル人)、キリスト教徒など宗教上の理由を挙げる人もいる。