2024年12月22日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2024年3月31日

『2023.11.11~12.28 47日間 総費用22万円(航空券8万7000円含む)』

バックパッカー旅は“犬も歩けば棒に当たる”

老朽ビルの三回に看板が出ているのがコロンボの安宿『ダウンタウン・モン キー・ホステル』。国鉄のコロンボ・フォート駅、セントラル・バスターミナルまで歩いて10 分以内と至便のためバックパッカーの溜り場となっている

 バックパッカーとして海外を歩いていると“老人も徘徊すれば棒に当たる”であり、変わった人間に出会ったり、えっと思うような興味深いことを見聞したりすることがある。古希の放浪ジジイにとってはむしろ世界遺産や奇跡の絶景よりも面白い。

 しばしば旅先で名所旧跡や絶景スポットでパチパチと何枚も写真を撮っている同年配のオジサン旅行者を見かけるが虚しく感じてしまう。1回の海外旅行で恐らく1000枚以上の写真を撮るのだろう。恐らく数年すれば本人以外は二度と見ないのではないか。

 他方、旅のなかで偶然に出会って語り合ったり思いがけない経験をした時間は意図せずして自分の記憶の中に沈潜して堆積して心を豊かにしてくれるように思うのだが。今回は1カ月半のスリランカでのそんな“とりとめのない”遭遇(encounter)について振り返る。

原色のアフリカに魅せられた快男児@コロンボ

 12月13日。東京の大学4年生の日本男子。東南アジアの後、数週間スリランカをまわってきてコロンボに1泊。翌朝チェックアウトして数カ月ぶりに日本に戻る。

 昨年アフリカを旅してアフリカ大陸に魅せられたと熱く語る。奥地の電気・水道もない部落に単身飛び込んで数カ月暮らしたが、濁った湧き水を飲み、夜の明かりは焚火のみ、日中は畑仕事と牛の世話。草ぶき屋根と土壁の小屋の土間に草を敷いて寝る生活が忘れられないという。「スリランカは遅れてもバスは来るし、道は一応舗装されているしアフリカ奥地と比べればスリランカは間違いなく先進国ですよ」と断言。

 ケニアの社員数名の日本のベンチャー企業に2024年からインターンとして働く計画だ。アフリカに援助するのではなく、アフリカで必要とされる経済活動して、利潤も挙げて、現地君人を雇用して、現地の人々の生活を豊かにするという高邁な企業理念に惚れたと。久々に日本快男児に遭遇して気分が明るくなった。

岩見荘@シーギリア・ロックの韓国人学生

シーギリヤのエレファント・ツアー。付近一帯には野生の象の群れが生息し ており人間が野生象に襲われる事故が年間数軒発生している

 11月20日。世界遺産シーギリア・ロックを間近に望む眺めの良いテラスで韓国人大学4年生W君に会った。身長180センチ超、がっちりした体格だがソフトな物腰。驚いたのはW君が正しい日本語を流暢に話すことであった。日本のアニメやドラマで日本語を覚えたというが文法・語彙が素晴らしい。非常に優秀な人物だと直感した。

 W君は既に兵役を終えており2024年5月から就職活動を開始する。政治学専攻なので外務省、政府機関など就職先が限られるので民間企業も受けるようだ。韓国では就職先として公務員、財閥系大企業が人気だが激烈な競争だ。韓国社会の深刻な問題は猛勉強して大学入試、就職試験を必死でクリアしても就職してからも果てしない出世競争。つまり勉強や仕事にどんなに必死の不断の努力を重ねても“安らかな幸福”には手が届かないという絶望感が若者の間に広がりつつあると指摘。

 日韓関係、歴史認識について質問したが、年長者である放浪ジジイへの敬意を払いつつバランスの取れた見解を穏やかな口調で論理的に解説した。日本のTVの討論番組に出演して日本のタカ派の論客を相手にしても十分に説得力のある議論を展開できるレベルだと感服した。

 偶々隣のテーブルのフランス人グループと挨拶したがW君の英語力は想像以上であり、話の展開の仕方(会話の運び方)が見事だった。後で聞くとアルバイトでソウルのゲストハウスで半年働いた経験があり実践英会話を習得したというが。逸材W君が将来国際舞台で活躍する姿が目に浮かんだ。

閑話休題“韓国人の若者はなぜ刺青をするのか” 

シーギリヤの隣町ダンブッラの世界遺産洞窟寺院

 W君は腕に刺青(tatoo)をしていた。筆者は2023年3カ月の韓国自転車旅行をしたが若者の間で男女の区別なく刺青がフツウなことに驚いた。韓国の全羅南道でアラサーのいかにもビジネスウーマンというスレンダー美人のサイクリスト遭遇。100万円以上もするイタリア製高級自転車に乗っていたが肩に薔薇の刺青をしていた。

 9年前の韓国自転車旅行では刺青をした若者を全く見かけなかった。この急激な変化の背景には何があるのか。ある韓国の国際派知識人に聞いたところ「韓国では海外旅行ブームが続いているが若者たちが海外のビーチなどで欧米人が刺青を入れているのを見てカッコいいと感じてファッションとして刺青をすることが広がってきた」という。ちなみに中国人の若者の間でも同様に刺青派が増えてきている。

 日本では刺青=暴力団という社会通念が定着しており、かつ温泉や公衆浴場では刺青お断りが条例でも規定されているので普通の若者が刺青をすることは依然として稀であるが、刺青に対する社会的バリアがない韓国・中国で今後刺青が欧米のように一般化するのか興味深い。


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