博士号を目指すオランダ青年@シーギリア
11月20日。ホステルで同部屋のオランダ青年は長身でビール好きの好青年。仕事が忙しくやっと2週間休暇が取れたのでスリランカを効率よく見て回るため旅程がタイトと嘆いた。
青年は大学で生物工学(生命工学)を専攻して現在は医学系研究所で『DNA因子(factor)と肺癌発生のメカニズム』というような難しい研究に没頭していた。1000個の生体サンプルを分析して肺癌発生のメカニズムを解明するらしい。
青年は当該研究では生命工学の知識だけでなく、ITテクノロジーの知識も求められておりITテクノロジーも並行で習得している。こうした研究は他国の研究機関との国際競争なので残業・休日出勤は日常的らしく今回の休暇もやっと上司の許可が下りたとのこと。研究成果を纏めて論文を発表して博士号(PhD)取得するのが当座の目標だと語った。
彼のような真摯な人間の地道な努力により科学が発展するのだと改めて思った。他方でいつも残念に思うことがある。こんなに興味深い科学の最先端の貴重な話を拝聴しても古希ジジイの乏しい理系知識と英語力では正確な詳細が把握できない。つくづく“人は自分の知識の範囲内でしか物事を理解できない”という限界を思い知る。
日本の不思議『ニホンジンはみんな小さなタオルを持っている』
11月22日。夕刻シーギリアのホステルのテラスに欧米系バックパッカー男女が集まって賑やかに談笑していた。放浪ジジイが一同に挨拶すると、携帯電話でおしゃべりしていた金髪女子があわてて手招きした。
彼女は東京に滞在しているボーイフレンドと電話をしていたのだ。彼氏によると、日本は物価がスゴク安くてメッチャ楽しいという。そして「日本人は誰でも必ずハンカチ(small towel)を常に携行していると彼氏が言っているけどホント?」と聞いてきたのでポケットからハンカチを出して見せたら金髪女子は大爆笑。そして電話口の彼氏に「アナタの言うとおりだわ。スリランカに来てもニホンジンはハンカチを持って歩いているよ」と報告した。
テラスにはフィンランド人の金髪女子のほかデンマーク人、フランス人、カナダ人、など7~8人いたが不思議そうに「なぜ日本人はみんなハンカチを携行しているのか」と理由を知りたがっていた。「毎朝幼稚園や小学校に行く前に母親がハンカチとティッシュペーパーをポケットに入れたか子供に確認するので日本国民の習慣になっている」と日本文化を説明した。そしてポケット・ティッシュも出して見せたら大歓声。
日本人社会では当然のことでも外国人から見たら不可思議なことがあるのだ。自民党パーティ券の裏金問題など外国人に説明しても理解されないのではないか。
ラッキー・ビーチ・フロント・ホステル@ヒッカドウアのフランス青年
12月24~25日。大部屋の隣のベッドにいたのはフランス南部トゥルーズ出身のザック29歳。トゥルーズはエアバスの組み立て工場が出来て以来産業都市として発展しているらしい。放浪ジジイは8年前にフランス東部のル・ピュイから出発してスペイン巡礼街道を1560キロ歩いた。途中でトゥルーズに両替のため立ち寄ったことがあった。
ザックによると現在フランスではパリ、マルセイユ、リオンについでトゥルーズは僅差で四番目の大都市であると。しかもリオンは経済が停滞しているため人口が減少傾向で逆にトゥルーズは年々増加しており、既に3番目の大都市になっている可能性があると解説。そして移民労働者の流入が多いのが増加の一因と分析。
ザックと話しているといかにもフランスの知識人らしくウイットに富んでおり楽しい。このトゥルーズの人口についての話し方から明らかなように客観的事実と自分の分析を織り交ぜて語る。仕事はソーラー・パネル関係と言っていたのでてっきり大学卒のエンジニアだと思っていた。
オーストラリアで2年間仕事をしていたというので聞いてみたらワーキング・ホリデーで建物の屋根にソーラー・パネルを設置する作業をしていたという。ちなみに設置作業会社は中国系企業だ。高校を卒業してから一定期間働いて金を貯めて海外放浪するという繰り返しをしてきたので専門職(special profession)はないという。
ザックと話して痛感したのは学歴=知識人ではないという“当たり前”のことである。定職に就かず仕事を転々としてバックパッカーをしていても自分の生き方に信念をもっている人間ならば語る言葉に深みがあり“素晴らしい知識人”足り得るのだ。
以上 次回に続く