2024年11月22日(金)

キーワードから学ぶアメリカ

2024年3月28日

第三の政党・候補が持つ意味

 米国は二大政党制の国だと指摘されている。もちろん、実際には第三の政党も存在しており、市の選挙などでは長く議席を保持している政党は存在する。だが、大統領選挙に関していえば、第三の政党に属する候補が当選したのは、1860年の共和党のエイブラハム・リンカーンのみである。

 米国では連邦レベルでは小選挙区制で選挙が展開されているために相対多数の票を獲得しなければ勝利できないこと、また、大統領選挙に際して大半の州が勝者総取り方式を採用しており、多くの州で勝利しなければならないこと、などの事情から、第三の政党・候補が大統領に就任するのは困難である。そもそも、第三の候補が投票用紙に名前を載せるためには多くの署名を集める必要があるし、大統領選挙前の討論会に参加するためには2024年の場合は世論調査で15%以上の支持を継続的に集める必要があるなど、参入障壁も高いのである。

 だが、近年の政治の膠着状態を見て、第三の政党・候補に対する期待が強くなっている。大統領選挙の一年前の時点で第三の候補に集まっている支持率は、1992年のロス・ペロー以来最大となっている。第三の候補が大統領選挙結果に影響を及ぼした可能性があるとされるのは、最近では1992年のペロー、2000年のラルフ・ネイダー、16年のジル・スタインなどに限られ、その影響の度合いについても評価は分かれている。

 だが、21世紀になって第三の候補に最も票が集まったのは16年で、二大政党の候補への評価が低かった時であったことを考えると、24年大統領選挙についても第三の政党・候補が一定の存在感を示す可能性があると考えられよう。とりわけ、彼らが先の6つの接戦州でどれだけのパフォーマンスを示し、二大政党のいずれの足を引っ張るか(二大政党から第三の候補に投票先を変えることもあれば、二大政党の候補への投票をやめることもあるだろう)で、結果が変わる可能性が指摘されているのである。

ロバート・ケネディJr.:二大政党(特にトランプ)に脅威?

 それでは、現在24年大統領選挙に参加する可能性があると指摘されている候補について、簡単に紹介しておこう。

 ロバート・ケネディJr.は上院議員も務めたロバート・ケネディ元司法長官の息子で、ジョン・F・ケネディ元大統領の甥にあたる。環境問題専門の弁護士として活動してきたが、最近では、反ワクチンやコロナ関係の陰謀論を展開して注目を集めた。

 例えば、新型コロナウイルス(COVID19)は白人と黒人を攻撃のターゲットとしている、それに最も免疫があるのはアシュケナージ系ユダヤ人と中国人だ、という発言は、本人は曲解されていると主張しているものの、多くの注目を集めた。他にも、ウクライナ危機の発生はバイデンに責任があるとバイデンを批判したり、ワクチンの安全性をめぐって表現の自由が攻撃されたと主張したりしている。また、大企業優遇策も批判している。

 ケネディは当初は民主党候補となることを目指していた。民主党の予備選に出馬するならば傷を負うのはバイデンだけなので、共和党、とりわけトランプとロン・デサンティスはケネディを称賛していた。だが、ケネディが第三の党からの出馬を目指すことになると、その主張がトランプやヴィヴェク・ラマスワミなどと近いこともあり、共和党も脅威とみなすようになった。

 共和党は、ケネディは16年にはヒラリー・クリントンを支持したし、グリーンニューディールを支持したし、キーストーンパイプラインに反対したし、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスの増税提案を支持したりしたリベラル派のエリートだと、ケネディを批判するようになっている。

 世論調査によれば、ケネディを好意的にとらえている人の割合は民主党支持者よりも共和党支持者の方が高い。ケネディは両党の支持者に影響を及ぼす可能性があるものの、共和党の方が大きな影響を受けるのではないかと予想されている。

 なお、リバタリアン党という第三の政党は長い歴史を持っており、既に多くの州で投票用紙に名前を載せることが可能な状態となっている。同党は5月に候補者を決定する予定だが、ケネディを支持する可能性もあると指摘されている。


新着記事

»もっと見る