2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2024年5月10日

 日本の水産業の衰退が止まらない。海に囲まれ、豊富な水産資源があったはずが、漁業・養殖業生産量は低落を続け、過去最低記録を更新している。

 世界では水産業が成長産業化し拡大を続けているなか、日本が「一人負け」状態にあるのは一体なぜなのか――。日本の水産業の実態をわかりやすく解説した記事を集めました。

 国内産業の危機に警鐘を鳴らす人気記事の中から、<水産業>をテーマにした必読の6本を編集部が厳選してお届けします。

<目次>

1:【いるはずなのに魚が獲れない】間違いだらけの日本漁業で生産量が過去最低記録を更新した理由(2023年6月19日)

2:【日本は中国依存体質の改善を】露の水産物禁輸でも輸出拡大のノルウェーに学ぶべきしたたかさ(2023年10月11日)

3:【インフラ事業推進の裏に天下り】水産予算増額でも実態は漁港整備メインの“なぜ”(2023年10月3日)

4:【小型化でも止まらないサバ乱獲】世界に学ばない日本の水産業が衰退を一途をたどる理由(2023年12月28日)

5:【国産シシャモが減り続けるのはなぜ?】ノルウェーとの比較で見る科学的資源管理術の差(2023年10月31日)

6:漁師を補助金漬けにする個別所得補償 形骸化された資源管理計画、日本の漁業に将来はあるか(2024年2月1日)

1:【いるはずなのに魚が獲れない】間違いだらけの日本漁業で生産量が過去最低記録を更新した理由(2023年6月19日)

サバの水揚げ(筆者提供)

 2022年度の漁業・養殖業の生産統計が発表されました。漁業と養殖の合計数量が1956年に現行調査を開始して以来、初めて400万トンを下回り、過去最低記録を更新しました。

 毎年生産量が減り続ける日本。世界全体では毎年増加しているので、世界的に見て極めて異例です。

 前年比で7.5%の減。サバ類、カツオの水揚げが前年比で大幅に減少、サンマ、スルメイカ、タコ類が前年に続き、過去最低を更新したなどと報道されています。そして減少している原因は、回遊場所が沖合に移っているなどと、海水温の上昇が原因と報道されています。

 確かに、海水温の変化は資源量に影響を与えます。しかしながら、もしそれが根本的な原因であれば、世界の他の海域でも同様に水揚げ量が減っているはずです――。

【続きはこちら】
日本の漁業・養殖業が過去最低記録を更新した理由

2:【日本は中国依存体質の改善を】露の水産物禁輸でも輸出拡大のノルウェーに学ぶべきしたたかさ(2023年10月11日)

かつてノルウェーにとって隣国ロシアは単一国家では最大の顧客であった(筆者提供)

 東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を薄めて海に放出を始めたことに対して、中国が日本産水産物の輸入を8月末から停止しています。そして1カ月が経過しました。

 2022年の実績で467億円と、中国向け水産物で品目別に最も多かったホタテの輸出が滞る報道をご覧になった方は少なくないと思います。中国向けのホタテの金額は、全水産物3873億円の12%を占めていました。

 近年、主要輸出先が水産物の輸入を停止されたよく似たケースがあります。最大の単一国家としての顧客であったロシアから輸入停止された、世界第2位の水産物輸出国であるノルウェーです――。

【続きはこちら】
露の水産物禁輸でノルウェーのサーモンはどこ行った?

3:【インフラ事業推進の裏に天下り】水産予算増額でも実態は漁港整備メインの“なぜ”(2023年10月3日)

(traction/Shutterstock)

 2023年8月31日、水産庁は24年度予算の概算要求を発表した。デジタル庁計上分を含めると2587億円と、23年度の1919億円から大幅な増額である。水産予算は、18年度までは前年度補正を含めおよそ2300~2400億円で推移していたが、19年度には前年度補正含め約3000億円、22年度には3200億円と大幅に膨張している。

 予算が19年度から一気に増額されたのは、その前年に国会を通過した漁業法の改正に伴って実施されることとなった水産改革がきっかけになっている。農林水産省の統計によると、1960年代初めには70万人近くいた漁業者は右肩下がりに減り続け、22年には12万3100人と過去最低を記録した。漁業・養殖業生産量も1984年の1280万トンをピークに、2022年はこちらも過去最低の385万8600トンまで落ち込んでいる――。

【続きはこちら】
「国破れても漁港あり」漁港予算確保の前にすべきこと

4:【小型化でも止まらないサバ乱獲】世界に学ばない日本の水産業が衰退を一途をたどる理由(2023年12月28日)

サバの未成魚(筆者提供)

 サバの水揚げの最盛期であるはずの秋は過ぎて12月も終盤。しかしながら、資源があると言われているサバはほとんど見つからずで、漁獲されてもほとんどが小サバ。不漁と魚の小型化は、資源が減っている時に起きる典型的なパターンです。

 筆者は、日本およびその外側の公海上のサバなどの水産資源に関心を寄せる欧州連合(EU)やロシアなどの大手漁業会社に、国際フォーラムなどで説明する機会がある数少ない日本人です。その中で、資源量が多いと言っている日本のサバの資源評価(太平洋系群)は、過大評価である可能性が高いこと、資源評価自体が米国の海洋大気局(NOAA)から著しい改善が必要と指摘を受けていることなどを科学的なデータで説明しています――。

【続きはこちら】
日本のサバが危ない 幼魚も獲っちゃう仕組み

5:【国産シシャモが減り続けるのはなぜ?】ノルウェーとの比較で見る科学的資源管理術の差(2023年10月31日)

アイスランドで水揚げされたカラフトシシャモ(筆者提供)

 卵を抱え、脂ものったお馴染みの干しシシャモ(カラフトシシャモ)。原料の2大供給国は、ノルウェーとアイスランドで毎年2~3月前後が漁獲シーズンとなります。

 2023年10月に、ノルウェーシシャモで24年に漁獲が許可される数量・TAC(漁獲可能量)が発表されました。その数量は約20万トン(19.6万)と22年の漁獲量が僅か200トンまで落ち込んでしまった北海道のシシャモの漁獲量とは3桁違いの数量です。

 その漁獲枠はノルウェーとロシアで6:4に配分されます。そして、実際に漁獲できる数量より少なく設定されているので、漁獲枠通りに漁獲されていきます。

 ノルウェーでは水産業は成長産業。シシャモの増枠はさらに地方の産業を発展させていきます――。

【続きはこちら】
日本とノルウェーでシシャモ漁獲量に大差がある理由

6:漁師を補助金漬けにする個別所得補償 形骸化された資源管理計画、日本の漁業に将来はあるか(2024年2月1日)

(linegold/gettyimages)

 日本の水産業の衰退が止まらない。漁業・養殖業生産量は1984年の1282万5900トンをピークに低落を続け、2022年には70%減の385万8600トンと過去最低を記録した。他方、国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の漁業養殖業生産量は増加を続け、21年現在史上最高の2億1800トンを記録している。

 世界では水産業が成長産業化し拡大を続けているなか、日本が「一人負け」の状態にある。魚が獲れなければ、儲かるはずがない。農林水産省統計によると、22年度現在沿岸漁船漁業を営む漁家の平均漁労所得は136万円である。状況は極めて厳しい――。

【続きはこちら】
漁師を補助金漬けにする個別所得補償 形骸化された資源管理計画、日本の漁業に将来はあるか

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