2024年5月18日(土)

BBC News

2024年5月4日

トルコは2日、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ地区における「人道的悲劇の悪化」を理由に、イスラエルとの貿易を全面的に停止した。

トルコ貿易省は、イスラエルがガザへの援助物資が「途切れることなく十分に流入」することを許可するまで、この措置を継続するとしている。

トルコとイスラエルの昨年の貿易額は70億ドル(約1兆715億円)近くに上った。

イスラエルのイスラエル・カッツ外相は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が「独裁者」のようにふるまっていると非難した。

カッツ氏は、エルドアン氏が「トルコ国民とビジネスマンの利益を軽視し、国際貿易協定を無視している」とソーシャルメディアに投稿した。

また、トルコとの貿易について、国内生産と他国からの輸入に焦点を置いた代替案を見つけるよう、イスラエル外務省に指示したと付け加えた。

BBCの取材では、イスラエル外務省は、トルコとパレスチナ自治政府ならびにガザの間の経済的つながりを弱めるため、対策をとる方針。

トルコのオメル・ボラト貿易相は、停戦をめぐるイスラエル側の「譲歩しない頑なな態度」と、ガザ南部の街ラファの人道状況を批判。「トルコは、恒久的な停戦が確立され、途切れることのないガザへの援助が許可されるまで、イスラエルとの輸出入を全面的に停止する」と述べた。

数十年で関係悪化

トルコは1949年、イスラム教徒が多数を占める国として初めて、イスラエルを国家承認した。しかしここ数十年で両国関係は悪化した。

2010年には、イスラエルが設置したガザの海上封鎖を突破しようとしたトルコの船舶に、イスラエル特殊部隊が乗り込み、船に乗っていた親パレスチナ派のトルコ人活動家10人が死亡した。トルコはイスラエルとの国交を断絶した。

両国の国交は2016年に回復。しかしその2年後には、ガザとイスラエルの境界での抗議行動で複数のパレスチナ人がイスラエル人に殺害されたことをめぐり、お互いの国のトップ外交官を国外退去させる事態となった。

そして昨年10月7日にハマス攻撃をきっかけにガザでの戦闘が始まって以降、エルドアン氏はイスラエル批判を強めている。

エルドアン氏はネタニヤフ氏をナチス・ドイツの指導者アドルフ・ヒトラーや、第2次世界大戦時のイタリアでファシスト政権を率いたベニート・ムッソリーニ、旧ソ連の指導者ヨシフ・スターリンになぞらえて、「ガザの虐殺者」と呼んでいる。

一方のネタニヤフ氏は、エルドアン氏はイスラエルに道徳を説ける最後の人物だと述べている。3月には、エルドアン氏が「ハマスの大量殺人犯と強姦魔を支持し、アルメニア人虐殺を否定し、自国のクルド人を虐殺している」とした。

エルドアン氏は数カ月前から、対イスラエル措置を打ち出すよう求める与・野党からの政治的圧力にさらされている。

与党・公正発展党(AKP)は3月末の地方選挙で、過去20年で最悪の敗北を喫した。多くの敬けんな有権者は、イスラエルに対する強硬策を訴えたイスラム主義の野党・新福祉党を支持した。

選挙から間もなく、トルコは鉄鋼からジェット燃料、農薬、建設機械に至るまで、イスラエルに輸出される54製品に制限を課した。

トルコ貿易省は2日、この措置の対象が現在、すべての輸出入に拡大されていると述べた。

イスラエルは2023年にトルコの輸出額の2.1%を占め、トルコにとって13番目に大きな輸出市場となった。イスラエルにとっては、トルコは5番目に大きな輸入元だった。

ガザの人道状況

ガザの状況をめぐり、イスラエルに対する批判はますます強まっている。

国連の世界食糧計画(WFP)は3月、ガザでは約110万人が壊滅的な飢餓に直面しているとの報告書を出した。ガザ北部にも飢餓が差し迫っており、5月までに発生すると予測されるとしている。

米ホワイトハウスは3日、ガザへの援助物資の流入を促進するために米軍が建設した桟橋が、数日中に使えるようになるだろうと発表した。

アメリカは米海軍艦船の隣で、鉄鋼製の浮桟橋を組み立てている様子を捉えた画像を公開した。

ただ、国連側は、海上援助回廊は陸上輸送の代替にはなりえないとし、必要とされる物資の大部分は陸路で運ぶしかないとしている。

イスラエルは今週初め、西側の同盟国からの圧力と、国際援助団体からの再三の要請を受け、ガザ北部のエレズ検問所を援助物資の搬入のために再開させた。

しかしヨルダンは、援助物資を載せた車両の一部が、検問所に到着する前にイスラエル人入植者に襲撃されたとしている。

国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は、イスラエルがガザにおける飢餓を戦争の武器として使っている事例があり、これは「真実の可能性が高い」とBBCに語った。

イスラエルは援助物資の搬入に制限はかけていないとし、国連はガザで援助を必要としている人々に物資を届けられていないと非難している。

昨年10月のハマス奇襲で、イスラエル側では約1200人が死亡し、253人が人質に取られた。イスラエルが直後に開始したガザでの報復攻撃ではこれまでに3万4500人以上が死亡していると、ハマス運営のガザ保健省は発表している。

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は1日、イスラエルとハマスに対し、「今がまさに」ガザでの停戦を実現し、同地区に残された人々を解放する時だと訴えた。そして、交渉のテーブルの上に合意がある、ハマスはそれに応じるべきだと述べた。

交渉の仲介役は、最新の提案に対するハマスの返答を待っている。

この案には、40日間の停戦と、30人以上のイスラエル人人質の解放、そしてイスラエルで収監されているパレスチナ人囚人の釈放が含まれると報じられている。

(英語記事 Turkey halts trade with Israel over 'humanitarian tragedy' in Gaza

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cv2rk0r123eo


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