2024年10月26日(土)

BBC News

2024年10月22日

旧ソヴィエト連邦構成国の東欧モルドヴァで20日、憲法を修正して欧州連合(EU)に加盟することへの是非を問う国民投票があり、賛成が僅差で反対を上回った。

21日午後の時点(開票率99.6%超)の公式集計では、賛成が50.46%、反対が49.54%だった。

僅差の投票結果は多くの人々に衝撃を与えた。ルーマニアとウクライナに隣接する人口260万人のモルドヴァであった今回の国民投票は、賛成が反対を大きく上回ると予想されていた。

国民投票と同時に大統領選挙もあった。親EU派の現職のマイア・サンドゥ大統領は、最多得票したものの再選を決められず、来月の決選投票に臨むことになった。

サンドゥ氏は21日、国民投票の結果を受け、「困難な戦い」の初戦に親EU勢力が勝利したと述べた。また、「不当」な戦いだったとも言った。

同氏はさらに、モルドヴァの「敵」である人々や「犯罪集団」が「外国勢力」と協力し、金、うそ、プロパガンダを使って票を動かしたと非難。30万票が買収された「かつてない規模の詐欺」の「明確な証拠」を、政府は握っているとした。また、いかなる民主主義にとっても危険な現象だとした。

前日の20日には、僅差となっているのは外国勢力がモルドヴァ政治に干渉したためだとサンドゥ氏は述べ、同国が「民主主義に対する前例のない攻撃」を受けたとしていた。

どちらの日の発言でも、サンドゥ氏はロシアを明確に名指しはしなかった。だが、モルドヴァ当局はここ数週間、同氏とEU加盟に反対する投票をさせようと有権者に金銭を支払う、ロシアの大規模な策略を摘発していた。

クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は、外国の干渉があったとするサンドゥ氏の主張について、同氏が「証拠」を提示する必要があると述べた。

EUのペーター・スタノ報道官は21日、投票は「ロシアとその代理人による前例のない干渉と脅迫の下で」実施されたとした。

親ロシア派でロシア在住のモルドヴァ人実業家および政治家のイラン・ショール氏は先月、国民投票で「できるだけ多くの人々」を反対票を投じるか棄権させるため、金銭を支払うと宣言していた。さらに先週には、大統領選で「サンドゥ以外」に投票するよう呼びかけるビデオ声明を出した。

BBCは投票日の20日、モルドヴァのトランスニストリア地域の投票所で、票の買収の証拠を偶然発見した。同地域はロシアから経済的、政治的、軍事的な支援を受けている。

BBCのプロデューサーは、透明な箱に投票用紙を入れたばかりの女性が、報酬はどこでもらえるのかと選挙監視員に尋ねるのを耳にした。

BBCのサラ・レインズフォード東欧特派員がこの女性に、投票をめぐって現金の提供があったのか尋ねると、女性はためらいなく、あったと認めた。そして、投票所まで送ってくれた男性が急に電話に出なくなったとし、「彼にだまされた!」と立腹した様子で言った。

この女性は、誰に投票したのかは答えなかった。

今回の投票はモルドヴァにとって、EU加盟を目指すのか、それともロシアとの緊密な関係を維持するのかをめぐって、重要な試金石になるとされた。

大統領選では、サンドゥ氏(行動と連帯、PAS)が得票率42%ので1位となり、同26%で2位のアレクサンドル・ストヤノグロ氏(社会党、PS)との決選投票に臨む。親ロシアの社会党のストヤノグロ氏の得票率は予想を大幅に上回った。

11月3日の決選投票は、1回目の投票で落選したポピュリストのレナト・ウサティ氏と前ガガウツィア州知事のイリーナ・ヴラ氏が反サンドゥ氏でまとまるとみられ、同氏にとってはきびしい展開が予想される。

モルドヴァは現在、EUと加盟交渉を進めている。今回の国民投票には法的拘束力がないため、結果にかかわらず加盟交渉は継続される。

ただ、国民投票によってEU加盟の動きは不可逆的なものになるとみられていたが、今回の結果で、やや不確実な印象を与えることになった。

近隣のEU加盟国と緊密な関係を築いてきたサンドゥ氏は、今回の国民投票をモルドヴァの「何十年も先」を決めるものだと位置づけ、EU加盟への賛成票を投じるようキャンペーンを展開してきた。

(英語記事 Moldova says 'Yes' to pro-EU constitutional changes by tiny margin

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cr4x4q7re43o


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