2024年10月26日(土)

BBC News

2024年10月22日

韓国政府は21日、北朝鮮の兵士らがウクライナで戦うために訓練を受けているとし、駐韓ロシア大使を呼んで、北朝鮮兵の「即時撤収」を求めた。

韓国の情報機関は、特殊部隊の兵士ら約1500人の北朝鮮兵がすでにロシアに到着しているとしている。

韓国外務省の金烘均(キム・ホンギュン)第1次官はこの日、ロシアのゲオルギー・ジノヴィエフ大使を呼び出し、こうした動きを非難。韓国は「あらゆる方法で対応する」と警告した。

また、「韓国だけでなく国際社会にも深刻な脅威を与えている」と述べた。

ジノヴィエフ大使は、懸念を伝達すると返答。一方で、ロシアと北朝鮮の協力は「国際法の枠内」にあると強調した。

大使の言う「協力」が何を指すのかは不明。ロシア軍と共に戦う目的で、北朝鮮が軍隊を派遣したとされることについては、事実なのか明確にしなかった。

クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官はこの日、両国の協力は「第三国と敵対するものではない」と記者団に述べた。ロシア国営タス通信によると、「誰にも心配をかけるものではない」と、ペスコフ氏は付け加えた。

北朝鮮は、兵士派遣の話が出ていることについてコメントしていない。

韓国は以前から、ロシアがウクライナとの戦争で使う武器を、北朝鮮がロシアに供給していると非難している。ただ、現在の状況は、軍事物資の移送を超えるものだとしている。

韓国メディアの一部は、最大1万2000人の北朝鮮兵が派遣される見込みだとの観測を伝えている。

北朝鮮とロシアの協力関係

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は6月、安全保障に関する包括的戦略的パートナーシップ条約に署名。以来、協力関係を強化している。同条約は、他国に「侵略」された場合に相互に支援するとしている。

プーチン氏は先週、この条約の批准に関する法案を提出した。

北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は21日、北朝鮮がロシアと戦うために部隊を派遣することは、紛争の「重大なエスカレーションになる」と述べた。

韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領は同日、ルッテ氏と電話で協議。NATOに対し「具体的な対抗措置」を検討するよう求めた。また、韓国、ウクライナ、NATOによる安全保障協力を強化していくと付け加えた。

韓国大統領府によると、訪韓中のイギリスのデイヴィッド・ラミー外相は、ロシアの行動を「無謀で違法」だと批判。イギリスは韓国と協力して対応すると述べたという。

アメリカと日本も、北朝鮮とロシアが軍事関係を深めていることを非難している。

一方、中国外務省の林剣報道官は、北朝鮮とロシアの協力に関するBBCの質問に対し、中国はすべての当事者が緊張緩和に努め、ウクライナ危機の政治的解決を目指すことを望んでいると述べた。

多くの国を引き込む恐れ

一部の防衛専門家は、北朝鮮の関与がウクライナでの戦争を複雑にしかねないと、BBCコリア語に話した。

韓国国家戦略研究院の文聖默(ムン・ソンモク)氏は、「北朝鮮の関与は、この紛争に多くの国が参加することへの扉を開き、より多くの国を引き込む恐れがある」と指摘。

「国際社会はロシアと北朝鮮の両方に対して制裁と圧力を強めるだろうが、北朝鮮の関与がどちらかの国にとって本当に利益になるのかはまだわからない」とした。

北朝鮮の部隊を、ロシア軍部隊が前線で組み入れるのは困難だろうとの見る向きもある。言葉の壁や、北朝鮮軍に最近の戦闘経験がないことを根拠とするものだ。

ウクライナで軍事関連情報を発信している「ディフェンス・エクスプレス」編集者のヴァレリー・リャビフ氏は、北朝鮮兵の部隊について、「ロシアとウクライナの国境の一部の守備につくことが考えられる。それにより、ロシア部隊は他の場所で戦うことができる」と話した。

そして、「これらの(北朝鮮兵)部隊がすぐに前線に現れる可能性はないだろう」と述べた。

追加取材:サンミ・ハン、ジェイク・クウォン、ホス・リー(ソウル)

(英語記事 Seoul wants N Korean troops to leave Russia immediately

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c1d5d0dexe9o


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