イスラエル軍は22日、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師の後継者と目されていたハシェム・サフィエディン師を、約3週間前の空爆で殺害したと発表した。
イスラエル軍の声明などによると、レバノンの首都ベイルートにあるヒズボラの情報本部を今月4日に空爆した際、同本部の司令官とされる人物とともに、サフィエディン師を殺害したという。
ヒズボラは、サフィエディン師の死亡を認めていない。前指導者のナスララ師は、9月27日にイスラエル軍のベイルート空爆により死亡した。
ヒズボラ側は、今月4日にベイルートの空港付近で空爆があった後、サフィエディン師と連絡が取れなくなったとしていた。米メディアはイスラエル当局者らの話として、この日の空爆はサフィエディン師を狙ったものだったと報じていた。
イスラエル軍はサフィエディン師を、長年にわたってイスラエルへの「テロ攻撃」を指揮し、ヒズボラの「中心的な意思決定」に参加してきたとして非難してきた。レバノンで大きな力をもつヒズボラは、イスラエルやアメリカ、イギリス、その他の国々がテロ組織に指定している。
サフィエディン師も2017年、アメリカとサウジアラビアによって「グローバルテロリスト」に指定された。
指導者の継承について説明
サフィエディン師はナスララ師のいとこで、イランで宗教学を学んだ。60歳前後だったとみられている。息子は、イラン革命防衛隊の最強部隊を率いたカセム・ソレイマニ司令官の娘と結婚していた。ソレイマニ司令官は2020年、イラクで米軍の空爆によって殺害された。
AFP通信によると、サフィエディン師は今夏のベイルートでの演説で、ヒズボラ指導者の継承について、「私たちの抵抗運動では、指導者が殉教すると、別の指導者が旗を引き継ぎ、新しく、確固とし、強力な決意で進み続ける」と述べたという。
イスラエルとヒズボラは、パレスチナのガザ地区での戦争をきっかけに、国境を挟んだ敵対行動を1年近く続けてきた。イスラエルは、ヒズボラのロケット弾やミサイル、ドローン(無人機)から身を守るために避難している国境地帯の住民を安全に家に帰らせるとして、9月末に対ヒズボラ地上作戦を開始した。
レバノン保健省によると、この1年間で少なくとも2464人のレバノン人が殺害され、1万2000人近くが負傷した。
ヒズボラは同時期、数千発のロケット弾とドローンでイスラエルを攻撃。ロイター通信によると、イスラエル北部と、同国が占領するゴラン高原で少なくとも59人が殺害されたという。