アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は14日、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(70)を保健福祉省のトップに指名した。ワクチンに懐疑的なことで知られるケネディ氏は、今年の大統領選に無所属で出馬したが、後にトランプ氏支持に回った。
次期大統領は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「アメリカ人は長い間、公衆衛生の欺瞞(ぎまん)、誤報、偽情報を拡散してきた食品産業複合体と製薬会社に押しつぶされてきた」と指摘。(※編集部注=太字部分は原文で頭文字を大文字にして強調。以下も)
「保健省は、この国で圧倒的な健康危機の一因となっている有害な化学物質、汚染物質、農薬、医薬品、食品添加物からすべての人々を確実に守る上で、大きな役割を果たすだろう」と述べた。
また、「ケネディ氏は、これらの機関を金ぴかの科学的調査の伝統と透明性の指標に戻し、慢性疾患の流行を終わらせ、アメリカを再び偉大で健康な国にするだろう!」とした。
上院で指名が承認されれば、ケネディ氏は保健福祉省の長官に就任する。保健や福祉、所得保障プログラムに関して大統領の最高顧問を務める。
同省は特に社会的弱者に対して、国民の健康を守り、不可欠なサービスを提供することを責務としている。保健、生物医学、社会科学の研究に加え、疾病予防や食品および医薬品の安全性確保も担当している。
さらに、食品のラベル表示や新薬の認可を決定する食品医薬品局(FDA)や疾病対策予防センター(CDC)を含む11の機関を監督している。
ケネディ元大統領のおい、ワクチン懐疑派
「RFKジュニア」とも呼ばれるケネディ氏は、民主党政治界で最も有名な一族の出身である。司法長官や上院議員を務め暗殺されたロバート・F・ケネディ氏の息子であり、1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ元大統領のおいになる。
環境保護派の弁護士であり、ワクチンに懐疑的な見方を示している。当初は民主党予備選挙への出馬を目指していたが、無所属候補として大統領選に出馬した。
選挙活動は、2014年にニューヨークのセントラルパークで車にひかれた子グマを捨てたという話や、かつて死んで打ち上げられたクジラの頭部をチェーンソーで切断し、それを車両の屋根に乗せて持ち帰ったという主張など、センセーショナルな話題に悩まされた。
最終的には選挙活動を中止し、8月にトランプ氏への支持を表明した。また、自身が成功しなかったことを、メディアによる検閲と、出馬を阻止しようとする民主党の活動のせいだと非難した。それ以来、ケネディ氏はトランプ氏の下で「アメリカを再び健康にする」ことを誓っている。
ケネディ氏はかねて、ワクチンに害があるという、すでに広く否定されている主張を繰り返している。ただ、いくつかの場面では、自分がワクチン反対論者であることを否定している。
ケネディ氏が長年にわたって繰り返し主張してきた誤った主張のひとつに、自閉症とワクチンとの関連がある。この主張は、複数の信頼性の高い研究によって否定されている。
同氏はまた、反ワクチン接種グループ「Children’s Health Defense」の代表でもある。
過去には、アメリカで新型コロナウイルス対策を主導してきたアンソニー・ファウチ博士に関する本「The Real Anthony Fauci」を出版し、ファウチ博士が「西側の民主主義に対する歴史的クーデター」を引き起こしたと非難した。
昨年ワシントンで行われた反ワクチンの演説では、ナチス・ドイツを引き合いに出した。
こうした姿勢は、親族からも強い反発を受けている。
それにもかかわらず、彼は自身が反ワクチン派だという指摘を否定しており、先週には、トランプ政権の一員として「誰のワクチンも決して取り上げない」と述べた。
(英語記事 Trump picks vaccine sceptic RFK Jr for health secretary)