パレスチナ・ガザ地区北部で現在も機能している数少ない病院の一つで27日、スタッフや患者らが強制的に避難させられたと、医療関係者が明らかにした。
ガザ北部にあるカマル・アドワン病院の看護部長イード・サッバ医師は、27日午前7時ごろにイスラエル軍から、15分以内に患者とスタッフを中庭に避難させるよう指示されたと、BBCに語った。
その後、イスラエル軍が病院内に入り、残っていた患者を外に連れ出したという。
イスラエル軍は27日午後、「ハマスのテロリストの拠点」だとする同病院の周辺地域で作戦を実施していると発表した。
作戦開始前に、兵士が病院から「民間人や患者、医療関係者を安全に避難させた」と、軍は付け加えた。
しかし、患者がどこへ移されたのかは明らかにしなかった。
イスラエル関係者は今週初め、カマル・アドワン病院にいる人々を、近くのインドネシア病院に移すつもりだと述べていた。イスラエル軍は24日、インドネシア病院のスタッフらに避難を指示していた。
「患者を危険にさらす」
サッバ医師は、「危険な状態だ。集中治療室(ICU)には、昏睡状態で人工呼吸器を必要とする患者が複数いる。移動させたら、彼らを危険にさらすことになる」と述べた。
「(イスラエル)軍がこれらの患者の移送を続けるつもりなら、特殊な車両が必要になる」
ガザ地区のユセフ・アブアル・リシ保健副大臣はその後、BBCに対し、複数の重篤な患者がインドネシア病院に移されたが、同病院は発電機や水がなく機能していないと述べた。
「病院と呼べるような場所ではない。むしろ避難所だ。患者のための設備が整っていない」と、リシ氏は述べた。
世界保健機関(WHO)は、イスラエル軍の今回の攻撃で、「ガザ北部の最後の主要医療施設が使用不能に陥った」としている。
「初期の報告では、(病院の)いくつかの主要部門が襲撃の際にひどく焼かれ、破壊されたことが示されている」と、WHOは27日夕、ソーシャルメディアに投稿した。
イスラエル国防軍(IDF)のナダヴ・ショシャニ国際報道官は27日夕、「病院施設内の空きビルで小規模な火災が発生したが、制御されている」とソーシャルメディアに投稿した。
火災発生時、IDFは病院内にはいなかったとし、「予備調査の結果、IDFの活動と火災との関連性は認められなかった」と付け加えた。
火災が起きたのは、カマル・アドワン病院のフッサム・アブ・サフィヤ院長が、病院周辺を狙ったIDFの一連の空爆で医療スタッフ5人を含む約50人が死亡したと明らかにしてから数時間後のことだった。
サフィヤ院長の声明によると、病院の向かいにある建物がイスラエル戦闘機の標的となり、小児科医1人と検査技師1人、その家族が死亡した。
最初の空爆現場に駆けつけたメンテナンス担当の技師1人も死亡したという。
声明によると、カマル・アドワン病院から500メートルの場所では、同病院の救急隊員2人が、別の空爆で死亡した。誰も現場に近づけないため、2人の遺体は路上に残されたままだという。
IDFは27日朝、「カマル・アドワン病院周辺への攻撃は認識していない」とし、病院スタッフが殺害されたとの報告内容を確認中だとした。
IDFは10月、ガザ北部でのハマスの再編を阻止するための攻撃を開始したと発表。以来、北部地域の一部で封鎖を強化している。北部ベイトラヒアにあるカマル・アドワン病院は、そのエリアの中にある。
国連は、推定1万~1万5000人が残る地域への援助物資の搬入を、IDFが厳しく制限し、同地域が「ほぼ完全に包囲されている」としている。
病院の管理者たちはここ数日、病院施設が定期的にIDFによる砲撃や爆発の標的になっているとして、必死に保護を訴えている。
国際NGOオックスファムによると、10月以降、複数の援助機関が同地域に物資を届けようとしているものの、IDFが支援を「意図的に遅らせ、組織的に妨害」しているため、物資が届けられずにいる。
(追加取材:シャイマ・ハリル)
(英語記事 Israel forcibly evacuates Kamal Adwan hospital in northern Gaza)