年末年始の休みに入り、ドラマを一気見しようという方も多いだろう。年の瀬には、NHK大河ドラマや連続テレビ小説の総集編や、民放各局が一挙再放送を放映する。2024年はどのようなドラマが放送され、話題になってきたのか。Wedge ONLINEのドラマをテーマにした記事7本を紹介する。
<目次>
・日本の女優は今、「ファニー・フェイス」の時代、映画にネット、テレビドラマで活躍する見上愛、古川琴音、髙石あかり (2024年9月15日)
・大河ドラマ「光る君へ」視聴率最低でも映像配信時代の「成功」Netflixドラマを手がけた脚本家・大石静のあざやかな手腕 (2024年1月27日)
・朝ドラ「虎に翼」ヒットの「はて?」伊藤沙莉が演じる女性法曹の開拓者、ジェンダー不平等社会の“今”(2024年5月11日)
・TVドラマ『SHOGUN』で高まる日本文化のイメージ、次へ生かすために経済界がすべきこと(2024年10月10日)
・【昭和のおじさんVS令和のZ世代】ドラマ「不適切にもほどがある!」に見る世代を超えた価値観「働き方改革」「コンプライアンス」、宮藤官九郎による世界観と提案(2024年2月16日)
・石原さとみがドラマ「Destiny」で挑む俳優イメージの転換、女性検事の懊悩で創る“自己のブランド”(2024年5月24日)
・<“静かに”主張するドラマ>「海のはじまり」「虎に翼」「Shrink」……批判精神が胸を打つ(2024年9月28日)
日本の女優は今、「ファニー・フェイス」の時代、映画にネット、テレビドラマで活躍する見上愛、古川琴音、髙石あかり (2024年9月15日)
ファニー・フェイス――オードリー・ヘップバーンが「ローマの休日」でデビューしたとき、それまでのエリザベス・テイラーらの美人女優とはちょっと違った魅力の個性的な表情を持ち、ときに使われた。
日本の映像業はいま、“ファニー・フェイス”の時代である。個性的な女優陣がドラマや映画で活躍している。彼女たちの魅力は演技の巧みさだけではない。
米国のテレビドラマの最高賞にあたるエミー賞において、真田広之がプロデュース・主演した「SHOGUN 将軍」が撮影賞や編集賞など14部門を受賞したように、世界的なネット配信の拡大のなかでコンテンツの多様性が広がっている。
岩井俊二監督は、黒木華がデビューした当時、「美人女優像から離れているのではないか」と問われて、「欧米人から見ると彼女はアジア的な美を感じる」と答えた。先見の明である。
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日本の女優は今、「ファニー・フェイス」の時代、映画にネット、テレビドラマで活躍する見上愛、古川琴音、髙石あかり
大河ドラマ「光る君へ」視聴率最低でも映像配信時代の「成功」Netflixドラマを手がけた脚本家・大石静のあざやかな手腕 (2024年1月27日)
大河ドラマ「光る君へ」は、NetflixやAmazon Primeなどの映像配信サービスが席巻している時代に船出した新しい時代の長編連続ドラマである。大河ドラマ史上最低の世帯視聴率ばかりに注目してはいけない。王朝の絵巻物を想起させる物語は、テレビというメディアからネット配信への画期のなかでコンテンツの可能性を示す傑作である。
世界初の女性による小説『源氏物語』を書いた紫式部を演じる吉高由里子にとっても俳優人生の画期となる作品となるだろう。
脚本の大石静は、Netflix配信ドラマ「離婚しようよ」(2023年・宮藤官九郎と共同脚本)をてがけた。テレビのベテラン脚本家のなかで映像配信ドラマの肝をいち早く学んだといえるのではないか。
Netflixの23年第4四半期の会員増加数は1310万人にのぼって過去最高だった。総会員数は2臆6000万人以上である。
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朝ドラ「虎に翼」ヒットの「はて?」伊藤沙莉が演じる女性法曹の開拓者、ジェンダー不平等社会の“今”(2024年5月11日)
NHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」が好調なスタートを切っている。伊藤沙莉がヒロインを演じている、モデルは日本初の女性判事であり、男女平等社会や少年犯罪に対する政府の政策にもかかわった三淵嘉子である。
脚本は吉田恵里香。三淵に関するさまざまな資料や雑誌のインタビューなどを溶け合わせて、最良のフィクションを作り上げた。
女性の成長を描く朝ドラの定番でありながら、週ごとのタイトルに「?」がつき、それに加えて、寅子役の伊藤沙莉がドラマのなかで「はて?」とつぶやいて考える。「はて?」はいまや流行語になりそうである。
寅子が「はて?」という言葉を吐くときは、女性を差別する発言にあったときばかりではない。さりげない日常のなかで、ふと疑問を感じたときである。
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朝ドラ「虎に翼」ヒットの「はて?」伊藤沙莉が演じる女性法曹の開拓者、ジェンダー不平等社会の“今”
TVドラマ『SHOGUN』で高まる日本文化のイメージ、次へ生かすために経済界がすべきこと(2024年10月10日)
真田広之氏が製作し主演もしたTVドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』が、エミー賞をほぼ総なめする18部門での受賞を果たした。そもそもは配信数が記録的なセールスを達成しており、評価も高かったことから、この結果にサプライズはなかったが、そのことも含めて壮挙といえる。ちなみに評価ということでは、アメリカの主要な批評サイト「ロッテントマト」では、プロ批評家の100%が推薦、アマ批評家を含めても99%が推薦という例外的な高評価となっている。
実際の作品についても、真田氏が長年こだわっていた「日本の文化に忠実な表現」ということが徹底されており、日本では難しい高度なCG技術の活用を含めて巨額な予算が投じられているだけあって十分に見応えがある。真田氏は映画『ラスト・サムライ』(エドワード・ズウィック監督、2003年)に出演した際に、アメリカ人のキャストやクルーとの間で、日本の文化をどう表現するか様々な葛藤を経験したことが知られている。今回の作品は、その意味で真田氏の積年の思いが結実したものと言えるだろう。
9月15日に行われたエミー賞の授賞式では、真田氏は受賞のスピーチを日本語で行った。異例なことだが、アメリカでは好感を持って受け止められている。そこもこれも、真田氏が「本物の日本文化」にこだわって、本作では日本語の台詞は日本語で貫き通し、視聴者もこれを支持していたことの表れであるし、熱心な視聴者を含めたアメリカ社会が、日本文化と日本語にポジティブなイメージを持っていることの証拠だと思う。
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【昭和のおじさんVS令和のZ世代】ドラマ「不適切にもほどがある!」に見る世代を超えた価値観「働き方改革」「コンプライアンス」、宮藤官九郎による世界観と提案(2024年2月16日)
「不適切にもほどがある!」(TBS・よる10時)は、クドカンこと宮藤官九郎が脚本を手がけるタイムスリップ・コメディの大傑作である。クドカンのドラマならではのパロディとギャグも満載だ。
主人公の中学校の体育教師・小川市郎(阿部サダヲ)が昭和と令和をタイムスリップしながら、現代社会の断裂の要因となっているコンプライアンスというポリティカル・コレクトネス(PC)の解決を探る正攻法のドラマでもある。
野球部の根性一辺倒の監督でもある小川(阿部)は、帰宅のために中学校の裏手のバス停から無人のバスに乗り込んだときからタイムスリップは始まる。小川は1935(昭和10)年生まれ、現代なら88歳の設定である。
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石原さとみがドラマ「Destiny」で挑む俳優イメージの転換、女性検事の懊悩で創る“自己のブランド”(2024年5月24日)
テレビ朝日系ドラマ「Destiny」(火曜午後9時)は、石原さとみが横浜地検中央支部の検事・西村奏(にしむら・かなで)役で、実家に放火した容疑者でかつての恋人・野木真樹役の亀梨和也の取り調べに当たって、真実を追究するラブ・サスペンスの傑作である。なにより、石原さとみが内面の感情の懊悩を深い演技力で魅せる。これまでの出演映像作品のなかで明るい健気な人物を演じてきた、俳優イメージの転換を図ろうとしている。
公開中の映画「missing」(吉田恵輔監督)のなかで、石原さとみは、6歳の娘が失踪した事件に巻き込まれた母親役を演じている。石原がパートタイムで働くミカン農園や夫とその勤務先の漁業協同組合の人々に支援されながら、ビラをまき、地元のテレビ局のローカル番組にも出演して懸命に娘を探す。
半年が経ち、2年が経っていく。髪の毛には枝毛が混じる。娘への思いと、発見できない焦燥感と感情の噴出が見事である。この映画は石原さとみが、吉田監督にメガホンを握って欲しいと願ってから約6年をかけて完成した。
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石原さとみがドラマ「Destiny」で挑む俳優イメージの転換、女性検事の懊悩で創る“自己のブランド”
<“静かに”主張するドラマ>「海のはじまり」「虎に翼」「Shrink」……批判精神が胸を打つ(2024年9月28日)
ドラマが視聴者の心を打つのは、愛であったり、サスペンスの物語だったりするのはいうまでもない。「社会派ドラマ」とかつてはいわれた、現代の問題を正面からえぐりだす物語もあった。最近のヒットドラマの伏流水として、批判精神があると考える。あえて社会派と銘打たなくとも、ドラマは主張する。
大ヒットドラマ「海のはじまり」(フジテレビ系)は最終回(9月23日)となった。亡き元恋人・南雲水季(古川琴音)との間に生まれた娘・海(泉谷星奈)を育てることになった、月岡夏(目黒蓮)がさまざまな人間関係の綾を解きほぐしながら、周囲の人々を頼る道を見つけ出して娘とともに歩む明るい未来を予感させるフィナーレだった。ドラマ史上に輝く傑作だった。
このドラマの伏流水は、水季(古川)の死因が子宮頸がんだったことにある。子宮頸がんワクチンは世界で普及していたにもかかわらず、ワクチンを打った若い女性のなかから体調不良を起こしたケースがあったことから、朝日新聞がまず“薬害”のキャンペーンを張った。これにNHKや他の新聞のなかにも追随するメディアが相次いだ。