2024年12月29日(日)

BBC News

2024年12月28日

北大西洋条約機構(NATO)は27日、フィンランドとエストニアを結ぶバルト海の海底電力ケーブルが損傷したことを受け、バルト海での軍事プレゼンスを強化する方針を示した。またエストニアは、海底ケーブル「エストリンク1」を警護するため、警備艇を派遣した。フィンランド湾で主要電力ケーブル「エストリンク2」が破損したのは、ロシアの工作によるものだと欧州連合(EU)は非難している。

送電用ケーブル「エストリンク2」の破損については、切断された時間帯に付近を航行していたタンカー「イーグルS」(クック諸島船籍)によるものとされる。フィンランド警察は、イーグルSのいかりがケーブルを切断、または損傷させた疑いがあると発表した。フィンランド沿岸警備隊がこのタンカーに乗り込み、フィンランドの水域へ誘導した。

EUは、イーグルSが「ロシアの影の艦隊」の一部だと批判。海底ケーブルの破損は「重要なインフラに対して攻撃が続いていると疑われている中での、最新の事例」だと述べた。

エストニアのハンノ・ペフクル国防相は、海軍の警備艇が27日早朝に出航したと発表。フィンランドも、残るケーブル警備のため合同作戦に参加するとの見通しを示した。

ペフクル氏はエストニアの公共ラジオに対し、警備艇の任務は「不測の事態が起きないようにすること」のほか、フィンランドとエストニアを結ぶ「不可欠なケーブルの運用」を確保することだと話した。

クレムリン(ロシア大統領府)は27日、ケーブル損傷についてコメントを避け、「とても狭い問題」だとして、ロシア大統領府には関係のない事案だという姿勢を示した。

NATOのマルク・ルッテ事務総長は、フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領と話をしたとソーシャルメディアで明らかにし、NATOはバルト海でのプレゼンスを強化すると付け加えた。NATOは声明で、「NATOは引き続き警戒を続け、支援をさらに提供するため取り組んでいる」と述べた。

フィンランドとエストニアは共にNATO加盟国。エストニアのクリステン・ミハル首相は公共テレビで、必要となれば北大西洋条約第4条を発動すると述べた。同条は、加盟国が領土保全、政治的独立又は安全が脅かされていると認めたときはNATOとして協議すると定めている。

首相はBNS通信に対して、「抑止力になるよう、NATOから艦隊の形で追加支援を受けたいと願っている」と話した。

エストニアの電力供給は、全長170kmの「エストリンク2」ケーブルの破損を受けて、大幅に減少した。フィンランドの国営送電会社フィングリッドは26日に破損状況を点検した結果、ケーブルの修理は2025年7月末までかかる可能性があるという初期評価を明らかにした。

バルト海では海底ケーブルの破損が相次いでいる。エストリンク2の損傷は、1カ月余りの間で3件目になる。

11月には2本の通信ケーブルが切断された。11月17日にはスウェーデンのゴットランド島とリトアニアを結ぶアレリオン・ケーブルが切断された。翌日には、フィンランドの首都ヘルシンキとドイツのロストック港を結ぶ「C-Lion 1」ケーブルの損傷が確認された

船舶追跡サイトのデータからは、それぞれのケーブルが切断されたのとほぼ同じ時刻に、中国船「伊鵬3」がケーブルの上を航行していたことがうかがえる。ロシアによる破壊工作の一環として、「伊鵬3」がケーブルの上でいかりを引きずった疑いが指摘されている。

2023年10月には、別の中国の船がフィンランドとエストニアを結ぶガスの海底パイプラインを破裂させた。

「伊鵬3」と「イーグルS」は、ロシアがウクライナの全面侵攻を開始して以来、西側諸国の制裁を回避するために使用しているとされる「影の艦隊」の一部だろうと疑われている。

EUは、「安全と環境を脅かすロシアの影の艦隊」への対抗措置を検討中だと発表。これには制裁も含まれるという。

スウェーデンとデンマークの間のカテガット海峡に11月19日から停泊していた中国船は、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、フィンランドの当局による乗船を受けたものの、12月21日に出航した。

一方、フィンランド当局は、26日早朝にイーグルSに乗船したと発表。タリンからフィンランド湾を経由してポルッカラ沖へ護送したと発表した。

フィンランド国境警備隊のマルク・ハッシネン副長官は記者会見で「我々の警備艇が現場に向かい、船のいかりがなくなっていることを目視で確認した」と述べた。

エストニアのミハル首相は26日、エストニア国民に対し、電力の安定供給は今後も確保されると説明。主要電力会社のエレリングとエスティ・エネルジアには、複数の備蓄や予備の電源や発電所があると記者団に話し、国民に安心するよう呼びかけた。

その上で首相は、海底の全域を常に完全に守りきるのは不可能だとも付け加えた。

(英語記事 Estonia navy to protect undersea power link after main cable damaged )

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/clyke1eklrjo


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