プライドと認知機能低下の関係
そもそも質問とは何かというと、相手の考え方やものの見方の背景にある、まだ言葉になっていないものを言葉にしてもらうためにいろいろな角度から行うアプローチです。うまく質問できれば、相手の話を深く理解することができ、相手の視点を借りてものごとを見るきっかけを得られます。もちろん、有益な情報が引き出せることもあります。
しかし、質問するには、頭を使って適切な問いを考えなければなりません。質問によって、答える側の頭の中がわかりますが、問う側の頭の中も透けて見えてしまうのです。「それが面倒だから何もしないのが一番だ」というのは、会話における工夫をしないというだけでなく、自分をアップデートし続けないことを良しとすることになります。脳にとって一番良くないのはその点です。性格特性の中で、好奇心が強く、新しい知識を吸収する傾向にある人は、認知症発症リスクが低いことが知られています。
私がこれまで会話を研究してきて、確信を持って言えることが一つあります。それは、「知っていることで済ませようと思ったら老化の始まり」ということです。
自分が知っていることや関心があることしか会話の話題にしない。
自分がうまくできるとわかっていることしかやろうとしない。
自分のやり方に固執し、絶対に変えない。
このような傾向がある人は、認知機能が低下しやすいタイプなのではないかという考えを持つにいたりました。もしも自分がこのタイプに近いと感じるなら、自分をアップデートし続けるために簡単なことから始めてみましょう。
そのやり方の中で、いつでもどこでもできるのが質問だと私は考えています。会話の中で自分の知らない言葉が出てきたときに知ったかぶりをしがちなら、「〇〇って何?」と質問してみます。「〇〇って何?」を口グセにするつもりでいると良いでしょう。
話の腰を折るようなら、話の流れがいったん落ち着くところまで質問を覚えておけば、「さっき言ってた○○のことなんだけど」と切り出せます。
まずは覚えておいて、自分である程度調べたうえで、「このあいだ言ってた○○についてもっと教えてくれる?」と、時間差で投げかけるのも良いと思います。覚えておくことで脳を使える上、語彙も知識も増えます。
こんな方法が、世代間のコミュニケーションギャップ解消にも役立つでしょう。今自分の頭の中にある情報に固執せず、思考のエリアを拡張していけます。