中国メディアは何を報じているか

2014年2月27日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

北京は「人類が居住するのに適さない程度に
近づきつつある」

 実はPM2.5が外国からの攻撃を難しくしている、というようなトンデモ論は前にも出たことがあり、日本でも紹介されたが、削除された経緯があった。ところが今回は有名教授がしっかりとテレビでコメントし、記事で発言が紹介されるという顛末になっている。

 皮肉なことに張教授がテレビでPM2.5について云々言っているまさにそのとき、北京の大気汚染は深刻な状況になっていた。北京市は大気汚染対策特別室(北京市空気重汚染応急指揮部弁公室)を昨年11月に立ち上げたが、2月21日に三級警報を出した。警報は出された当初、四段階(下から青、黄色、オレンジ、赤の順)で下から二番目の黄色(三級警報)だったが翌日には一段引き上げられ、オレンジ(二級)になった。オレンジはもちろん、黄色警報が出されたのもこの特別対策室の立ち上げ以来初だった。(1月に青色警報は発令されている)

 習近平国家主席は2月25日昼前に、まさにこのような天気の中でマスクを着けずに北京市内を散策して市民と交流し、民衆との近さをアピールした。

 政府系シンクタンク、中国社会科学院がこのほど出した『国際都市青書(2014)』は世界の40の都市のうち北京を38位に位置づけ、汚染の程度は既に「人類が居住するのに適さない程度に近づきつつある」と警告しているほどだ。もし張将軍の言うようにPM2.5が国防の役に立つならそのまま都市を覆い尽くせば中国の国防は安泰だということになるのか。人が住めない場所で国防云々とは本末転倒ではないか。

釈明に躍起になる張教授

 実は彼は国防の兵器導入においてその技術評価を受け持つ委員のような仕事に長年携わっており、今回の発言は兵器の技術的効能からするとレーザー光線が濃霧に弱いという原理を述べたのに過ぎないことは理解できる。

 しかし、多くの市民が病気を患い、寿命を締めている現実の前に兵器機能を云々したところで何のための国防なのか、という大前提を考慮せずに発言した無神経さが中国人にとっても腹に据えかねるものだったようだ。

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