アンソニー・ザーカー北米編集委員、アイオニ・ウェルズ南米特派員
ドナルド・トランプ米大統領は、就任から1週間もたたないうちに、最初の国際関税紛争に関与した。相手は、たびたび批判を浴びせてきた中国でも、メキシコでも、カナダでもなく、南アメリカでアメリカの最も親しい同盟国の一つであるコロンビアだった。
コロンビアは26日、移民を強制送還する米軍機2機の着陸を拒否した。これがトランプ大統領に強硬措置を取らせるきっかけとなった。
「コロンビア政府がアメリカに強制送還された犯罪者の受け入れと返還に関する法的義務を違反することを許さない」と、トランプ大統領は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
トランプ大統領は25%の関税に加え、コロンビア政府の職員および協力者や支持者に対し、渡航禁止と「即時のビザ(査証)取り消し」を実施すると述べた。
しかしその後、ホワイトハウスはコロンビアが米軍機で到着する移民を「制限や遅延なく」受け入れることに同意したと発表した。その結果、アメリカは関税を実施しないことになった。
就任初週、トランプ大統領は貿易措置よりも移民に関する行政措置を優先しているようにみえた。前者は重要な選挙公約であったにもかかわらずだ。この点を強調するかのように、トランプ大統領はアメリカの新しい強硬な移民政策を十分に支持していないと見なす国々を罰する準備ができているようだ。
トランプ氏はアメリカの同盟国と敵対国に対して警告を発している。アメリカと協力しないなら、その結果は厳しいものになるだろう――と。
コロンビアは関税戦争から撤退したが、この戦術では新しいトランプ政権も試されている。
制裁が将来的にアメリカの消費者にとって価格上昇を引き起こす場合、アメリカ国民は反対するだろうか? トランプ大統領の移民政策優先の方針を進めるために生じる経済的な痛みを、国民は耐え忍ぶことができるだろうか?
アメリカはコロンビアからコーヒーの約27%を輸入しており、その他にもバナナ、原油、アボカド、花などを輸入している。コーヒーの輸入額だけでも約20億ドル(約3100億円)に達する。
コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は当初、自国民の送還を「犯罪者のように扱わず、民間機で受け入れる」と述べていた。
ペトロ大統領がトランプ大統領を嫌っていることは以前から知られており、これまでにも、移民政策や環境政策について厳しく批判してきた。
ペトロ大統領は、トランプ大統領が「貪欲のために人類を滅ぼす」と述べ、トランプ大統領がコロンビア人を「劣等な人種」と見なしていると非難した。さらに、自分を「頑固」だとし、トランプ大統領が「経済力と傲慢(ごうまん)さでクーデターを試みる」ことに対して、短く言えば、反撃すると述べた。
「今日から、コロンビアは世界中に対して、両手を広げて開かれている」
これは、移民問題に取り組もうとするトランプ大統領にとって懸念材料となる。新政権の高官たちははっきりと、この任務ではメキシコ国境の向こうを見据える必要があると述べている。
トランプ大統領が国務副長官に指名したクリストファー・ランダウ氏は長年、「このような移民の流れを止めるために他国と協力することが、アメリカの外交政策の世界的な義務だ」と主張しているが、コロンビアとの争いは、こうした協力をより難しくするかもしれない。
毎年、インドや中国などを含む世界各地から数万人の移民が南アメリカに上陸し、コロンビアを経由してダリエン地峡を越え、アメリカに向かう。この地域はパナマとコロンビアの国境のすぐ北に位置する主要な難所であり、多くの場合、犯罪組織の支援が必要となるような危険な旅となる。
トランプ氏の行動に対する対応として、ペトロ大統領は、ダリエンを通じた移民管理に関する協議が中断された場合、「違法活動が増加する」と述べた。この発言は、さらなる不法移民の増加を示唆する脅しと見なされる可能性がある。
ペトロ大統領は、コロンビア国民がアメリカから強制送還されることを拒否しないとすぐに述べたが、移民が「尊厳ある待遇」を受ける必要があると強調した。
コロンビアは対立を和らげるために行動した後も、「私たちの国民の尊厳を保証する」ための対話を維持すると述べた。
しかし、この種の関税は意志の強さを試すものであり、アメリカの要求に同意しない他の国々にも適用される可能性がある。そうした意味では、これはトランプ氏の最初の一手に過ぎないようだ。
(英語記事 Co-operate or else: Trump's Colombia face-off is warning to all leaders