2024年4月15日(月)

オトナの教養 週末の一冊

2014年3月28日

米国で余った石炭は欧州市場へ
ロシア産天然ガスからの転換

 ここまでは、すでに耳にしている話であろう。本書ではさらに、米国で起きている状況が今後どれだけ続くのか、米国経済と社会はシェール革命によりどう変わりつつあるのか、世界経済やエネルギー情勢への影響はどこまで及ぶのかを具体的に解説する。

 たとえば、米国では天然ガス価格の低下により、火力発電で石炭からガスへの転換が加速した。米国で余った石炭は欧州市場へ輸出され、欧州ではロシア産天然ガスから米国産石炭への転換が進んだ。

 ガス火力の競争力向上で、原子力発電や再生可能エネルギーは人気に陰りが出ている。これらを開発せずとも、石炭から天然ガスへの燃料転換により温室効果ガスの排出量は半分近くに減少する。手っ取り早く、コストも安くすむというわけである。

 こうした思惑から、オバマ大統領は2013年6月末、地球温暖化防止に向けて新たな行動計画を発表した。世界最大のCO2排出国である中国とも温暖化対策で連携することで合意した。

 産業面では、安価なシェールガスの利用によって石油化学が復活し「石化ルネサンス」を迎えている。著者によると、米国の石油化学製品はすでにサウジアラビアなど中東諸国と競合できるレベルに達しており、メキシコ湾岸はエチレンプラントの新増設ラッシュに沸いているという。

 自動車燃料のガス転換も著しい。今後、米国や中国といったシェールガス産出国では、輸送部門でも石油から天然ガスへの転換が進むだろうと、著者は予測する。

3E実現の切り札

 <米国でみられるように、シェールガスを産出できる国は、エネルギー安全保障(Energy Security)、環境対策(Environmental Protection)、経済効率性(Economic Efficiency)という、3E実現の切り札を得たことになります。また、天然ガスをLNGとして輸入する国は、現在の原油価格連動のLNGより安い価格で調達できる手段を手にすることになります。>

 そう著者が指摘するように、当初、シェール開発に及び腰だったEUも、ロシアからの天然ガス輸入の低減や地球環境問題への対応、米国の産業競争力への対抗を考え、シェール開発に舵を切りつつある。


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